2022.06.20

サスティナブルな5つの行動-⑤-


5つの目でみる


お陰様で「未晒し蜜ロウワックス」の販売をはじめ、2022年で24年が経ちました。振り返ると、サスティナブルな商品として育てるには、「5つの目」でみることが大切ということに氣がつきました。
【鳥の目】
高い場所から俯瞰して物事をみる

【魚の目】
流れをみる
【虫の目】
物事を細分化して多角的にみる

写真:ひろあき@ぼっちたび 
【コウモリの目】
逆さまに立って、逆の立場でみる



写真:Byrdyak - jp.freepik.com によって作成された tree 写真
【手の目】 手で触れた時に感じる何かをみる。 ※妖怪「手の目」ではありません(笑) 写真:©橘ちひろ

物事がうまくいかず、人や環境の責任にして、結局は自分自身が行き詰り、息苦しい毎日を過ごしていた頃がありました。ある時、恩師の言葉「とにかく手を動かせ!手が止まれば思考も止まる。」を思い出したのです。

専門学校での学びは、デッサンによる観察とフィールドワークの繰り返しです。常に4つの目(鳥の目 魚の目 虫の目 コウモリの目)をフルにつかい、淡々と動いていると、いつの間にか突破口が開けていたということが何度もありました。私の造語ですが、「手の目」とは、手で触れた時に感じる何かです。手を動かしていれば、自然と頭も働くので何をすれば良いのかがみえてきます。


今回のblogでは、「5つの目」をもって「無垢のメンテナンス文化向上」という課題に取り組んできたことを書きました。


無垢ならではの汚れやシミに困っている
~虫の目~


塗りなおしメンテナンスセットで汚れ落としをした縁側
無垢の家や家具に憧れる人が増えています。反面、無垢ならではの雨ジミやアク汚れは強力洗剤では落ちないため、「無垢にしなければよかった」と嘆く人はかなり多いのも事実です。


上の画像は、小川社の「塗りなおしメンテナンスセット」をつかって小川耕太郎の同級生が汚れを落としてくれたものです。「耕ちゃん、これスゴイぞ!」と電話をくれ写真を送ってくれました。
今までは、このようなシミや汚れができると、薬品をつかい専門業者が落としていました。プロが行う仕事ですので、確かに美しくなります。


しかし、薬品を使用するため安全性が気になる人も多く、また、経年の雰囲気はそのままにしたいという質感や風合い、趣きを重視する人、どこに相談したらよいかわからず放置している事例などがかなり多かったようです。



特に昔の家は、木の建具から雨水が入り、無塗装の縁側は雨ジミが多いです。「嫁に来てから、毎日拭き掃除をしていた」という話しもよく聞きます。ちなみに私は、日々の拭き掃除どころか、毎日掃除機をかけるのも無理です(笑)。



そこで、小川社では2017年より無垢ならではの汚れを落とす「塗りなおしメンテナンスセット」という商品の販売をはじめました。

木材にみえるけど無垢材ではない「合板」とは?
~コウモリの目~


元々、蜜ロウワックス塗布後のフォローアップとしてはじめたメンテ専用商品でしたが、販売をはじめると、古民家(無塗装)や他社の自然塗料メーカーの塗料を塗った無垢材のメンテのご相談が多く予想外でした。


また、合板フローリングの方からも多くのお問い合わせをいただいています。塗りなおしメンテナンスセットは無垢しか使えないので、お断りしないとなりません。


しかし、木のフローリング=合板フローリングと勘違いされている人が大半なので、その辺りをどのように説明すれば理解していただけるのかは、未だ悩み中ですが、私なりの解釈で説明します。
高度成長期に主流となった合板フローリング。
戦前は無垢しかなかったと思いますが、高度経済成長期に木材風の合板フローリングや家具が主流になり、本物に似せて加工をする「○○風ウッド」という商品が増えました。現代人は自然と離れているので、合板を木だと思う人の方が多いです(私も結婚するまで合板を木だと思っていました)


小川耕太郎は製材所の家で生まれ育ち、「無垢」の見分けができるので「そんなことはお客さんがフローリングの素材を調べて、どのようにメンテをすればいいか考えることじゃないかな?小川社が中途半端にフォローした結果、良かれとおもったことが大クレームになるケースも予測して、仕組みをつくらないと!」と注意されます。もっともな話です。


さて、2人の視点の違いを「コウモリの目(逆さまになってみる)」で考えてみます。都会で生まれ育った私には、お客さんの気持ちが理解できます。


カンタンにいえば「合板」と「無垢」の違いは構造です。 合板の構造を私なりにご説明すると・・無垢はどこをきっても全部「木」であるのに対して、合板フローリングの構造は、多種多様ではあるものの、よくあるのはべニアを何枚は貼り合わせ、その上に木をスライス極薄の板を貼ったり、木目プリントしたシートを貼りつくったものです。
【無垢板】
金太郎あめのように、どこを切っても無垢板。
【突板系合板】
台板はべニアなどを何枚か貼り合わせたものが多い。この台板の上に、無垢板を極薄にスライスしたものを貼る。
【プリントウッド系合板】
突板より安価なものが多い。台板はべニアなどを何枚か貼り合わせたもの。その上に木目を印刷したシートを貼る。シートの種類は強化紙、塩ビ、樹脂フィルムなどいろいろ。
合板の表層部分には、極薄にスライスした無垢材や木目調にプリントしたシートを貼っているため、 表面が削れてしまうと地(台板)がでます。表層が剥がれると、接着剤に影響がでるため、より硬質で丈夫な化学塗料で塗装が必要です。


合板の良い点は無垢に比べて安価、また無垢のような反りがなく加工がしやすい点です。硬質な化学塗料をかけているので掃除は楽で、味わいというよりかは、いつまでもキレイというのが特徴です。しかし、表面は数ミリの表層なので、表面が剥がれると、自分で修復するのは難しく、フローリングの場合は、部屋のフローリング全て張り替えというケースが多いです。我が社によくお問合せがくるのは、 表層部分の一部が剥がれた時です。

まずは、試す!3つのサポート
~手の目~

合板のフローリングや家具のメンテの場合は、我が社ではアドバイスできないのでお断りしないとなりませんが、当の本人も「合板なのか?」わからず写真を送られるケースが多く、私どもも写真だけでは判別がつかないこともあります。 



そこで、ワンコインでお試しセットを導入し、更に、LINE無垢専用メンテナンス教室(無料)というサポートをつけました。


「手で考える」という言葉を聞いたことがありませんか?頭で考えても理解できないけれど触れると理解できる!とか、工具などを作る職人は、目で見ると誤差を見落としがちだけれど、手で触ると見落とさない!といいます。


「手」は、頭で描いていた固定観念と現実をつないでくれるメディアともいわれています。自身の造語ですが、これを「手の目」と思っています。


お試しセットの仕組みは、まずは、自分自身の手で試した後に、無料個別相談ができます。だからお客さんも感覚的に何かを実感します。無垢の場合は「あーこうすればこんなに蘇るのか!」と実感してから購入でき、わからないことがあれば、チャットまたはオンラインで相談ができます。


一方、合板なのか?無垢フローリングなのか?今一つわからない場合は、ワンコインで試してみて、質問も無料でできます。ヒアリングを重ねた結果合板フローリングであると判明した場合は、塗りなおしメンテナンスセットは使えないことがわかりますので、無駄買いを避けられます。




「メンテナンス」という敷居を下げたのが良かったのか?塗りなおしメンテナンスセットは3つの理由でご好評をいただいています。
✓500円という価格
✓お試し体験ができる
✓LINEで気軽に質問できる

下記の写真はLINEサポートでご質問いただき、サポート後に落としたビフォーアフターの写真になります。

メンテナンスにお金を払う人はいない?
~鳥の目 vs 虫と魚の目~


サポートを続ける中で、また新たな問題がでてきました。


「虫の目」でみると、直にお客様の声を知ることができます。また「魚の目」でみれば、時代の変化にも気が付くため、それに細やかに対応するため、我が社の変革すべき点がみえます。


 一方で、「鳥の目」でみると「サポートをする人件費」と「サポートをする人材を育てるのはかなり困難」という面がみえます。「お客様が判断することに介入しすぎない」という小川耕太郎の視点も正しいのです。


我が社も、人材教育をしないといけないのですが、無垢の家の手入れは頭で理解をするよりも、五感をフルに使って掃除をしながら感覚で学ぶ方が早いのです。とにかく色々な場場所へ出向き経験値を増やすことが大切です。しかし、今の時代は身体で覚えるよりは理論的に指導することを求められるため、五感をフルにつかう指導では、辞めてしまうのでは?とも考えてしまいます。確かにサポートする人材を育てるのは難しく、私自身も躊躇しています。


日本では、「DIY=なにかをつくる」イメージが主流ですが、海外の場合、DIYにはメンテナンスや修繕も含まれます。 DIYという言葉・概念は、「(他人任せにせず)自身でやる」 。 お金を払って他者(業者)に依頼するのではなく、まずは自身で(つまり自分の身体を使って)家や道具を作ったり、何かを改造したり、修理したりする活動のことを指します。


最近はメルカリやフリーマーケットで古い家具を購入する人が増えました。リサイクル家具なら自分でも挑戦する人もでてくる一方で、要らないものはすぐに売ってしまい、購入する際に手入れを教わる機会も減っているため、そのようなコミュニケーションが必要とされています。

まちの人に小川社の悩みを相談する
共感型ブレスト「まちプロ」に参加。
~魚の目~


幸いにして、LINE使い方サポートにより喜んでくださったお客様が「無垢の家はメンテナンスすればカッコよくなる!」、クチコミを拡げてくれました!(感謝)ゆっくりな波ですが、魚の目でみれば時代の流れがみえます。


このゆっくりな波が追い風を受けたのが、2021年10月に、尾鷲市で「東紀州まちプロ」というイベントの企画を聞いたときでした。この企画は 

”定住者も
 移住者も
 民も
 官も
 誰でも楽しくブレスト!”

というコンセプトです。我が社もこのイベントのお誘いを受けました。正直言って、私はボトムアップでアイディアだしをした経験がなく、若い人の感覚についていけるだろうか?と不安はありましたが、思い切って参加しました。


若い世代に、「どんな本を読めばボトムアップや共感型の思想がわかるのか?」を教えてもらいました。おススメされた本3冊が、柳澤大輔『鎌倉資本主義』(プレジデント社)、柳澤大輔『アイディアは、考えるな。』(日経BP社)、新井和弘・高橋博之『共感資本社会を生きる~共感が「お金」になる時代の新しい生き方』(ダイヤモンド社)です。


2021年11月22日、まちプロが開幕。小川社のブースでは、「どうすればメンテナンス文化を向上できるのか」といった私の悩みを、まちの人に聞いていただき、まちの人にアイディアをだしてもらう「ブレスト交流会」がはじまりました。小川社以外のお悩みプロジェクトは3つあり、

→まちの人が気になるプロジェクトを一つ選ぶ

→プロジェクトごとに分かれる

→座談会でまちの人がアイディアをだす

という流れで、まちの人と一緒にブレストをしました。このブレストの方法は、鎌倉に本社を構える「面白法人カヤック」というIT事業所の方法を真似たそうです。 参加してはじめてわかりましたが、このブレスト方式ですすめると、風船のようにアイディアが膨らみ、誰もがアイディアをだす現象に、ビックリしました。 


 

まちの人のアイディアを元にWEB制作
~魚の目~


最終的には、自分の構想に、まちの人からでたアイディアをのせました。どんなアイディアかというと、 お客様の困り事を小川社が再現をし、それを動画に撮影するというものです。2022年春にようやく「無垢の汚れやシミ落とし専用のWEBページ」をアップしました。

ものと永くつきあう暮らしへシフトする


この仕事をはじめて日々大切だと思うのは「自分たちは何も知らないということを知る」ということです。実はこれが商売の面白さなのです!


哲学者ソクラテスが「無知の知」と言ったように、知らないからこそ「知る事の面白さに目覚める」と、いろいろな人や自然とそして仕事と関わりを持つことに好奇心が働くので、自ずとワクワクしてきます。


ワクワクすると、アンテナが立ち、実は毎日の仕事や暮らしの中にこそ、リアルな情報が潜んでいることを感知できるため、人と自然と仕事がつながります。氣がつくと、いつの間にかサスティナブルな取組を考えています。


そこが、地方で暮らし仕事をする面白さだ!と思うようになりました。地方は自然が身近にあるので声を拾いやすいのです。

これからもトライ&エラーを積み重ねながら、この地域で持続可能な社会へ向かう事業所の一員で在り続けたいと思います。最後に、私の大好きな二宮尊徳氏の言葉で締めます。

道徳のない経済は犯罪である。経済のない道徳は陳腐である 。(by 二宮尊徳)

(文章)小川百合子(おがわ・ゆりこ)
小川耕太郎∞百合子社 取締役。 主な仕事は持続可能な商品の一般化のためのPR。 1998年、山一證券が倒産した年に、夫婦で起業。地域の生物資源と産業(技)と自然が循環できることをコンセプトとした持続可能な商品づくりを目指す。

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