和紙の原料[那須楮]を煮熱する時に使う[灰]は草木灰。手間を惜しまず、楮の繊維を最大に生かす作業にこだわり、驚きの強さと耐久性をもつ奉書を作り続ける岩野家の仕事。

人間国宝 九代目 岩野市兵衛が漉く越前生漉奉書とは?

気が遠くなるような緻密な作業の繰り返しを、
何代にもわたり継承する岩野家の奉書。
驚異の耐久性と保存性から、
あのパブロ・ピカソも愛用していました。
最近では浮世絵の復刻版を
摺る際にも使用されています。
国を超え数々の芸術家が愛用しています。

現代の版画では最大で300回程、版を摺り重ねます。岩野家の漉く奉書は、そのような過酷な使用にも摺り耐え、紙の伸縮によるズレもでない強さがあります。 そのうえ経年と共に色彩が冴える奉書紙として、版画家などに絶大な評価を受けています。
9代に渡り、奉書としての「用」を一番に考え、楮のもつ長い繊維をそのまま活かした製造技術が守り伝えられてきました。

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品格の白

小川耕太郎∞百合子社が取り扱う奉書は、草木灰だけで煮熟し、紙漉きしたものです。岩野市兵衛さんでさえ、草木灰使用は約2年ぶりだとか。 ソーダ灰使用に比べると、更に手間もかかりますが、風合いや趣が格別な仕上がりになります。 また、そのようにしてつくられた奉書は、日差しによって少しづつ色が晒され、更に白さが増します。 その白さは、私達を優しく包み込んでくれるかのような、穏やかな輝きを与えてくれます。

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本藍染めの奉書

小川耕太郎∞百合子社が取り扱う奉書は、「白」「濃藍」「薄藍」の3種揃えを考えております。現時点では試作中ですが「薄藍」を加えることで、現代の感性に応じた、新たな用途が生まれるのではないでしょうか。本藍染に染めた奉書は、染め上がった奉書を、再度岩野さんが「漉き返し」したものです。漉き返しにより、藍の染料が均等にいきわたり、経年によって味わい深く褪せていきます。右の写真をご覧下さい。桂離宮の襖紙も、このような製法でつくられた、岩野さんの奉書が納められています。

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写真上、中:桂離宮。桂離宮の襖紙は岩野市兵衛が納めています。

写真下:九代目岩野市兵衛と跡継ぎであるご子息の岩野順市さん