初めて長勝鋸を手にし、角材を切ったとき、「この技術は後々まで伝えるべきだ」と強く思いました。長津勝一さんに実際にお会いし、お話を伺ったとき、この思いを即座に実行しようと決意しました。私にとって「長勝鋸」を、ないがしろにすることは、己の仕事をないがしろにすることと同じです。己の仕事に誇りを持つ者は「長勝鋸に触れ、その魂を体内に取り込むべき」と確信しています。
今回弊社が販売を始めるのは、約三十年前に長勝鋸が考案したものです。長勝鋸のファンには、待望の復刻版になります。しかし長勝さん曰く、「このチップソーは、刃数が36枚しかないから、こんなんで切れるわけがないという人もいるでしょう。」とのこと。
インターネットで検索すると、高級なチップソーは刃数が多く付いています。だから、刃数が多い方がきれいに切れると思い込んでしまうかもしれません。
そのような常識をひっくり返してしまったところに「長勝鋸」の独創性があるのです。このチップソーは、切り進みながらオガコをとばし、刃が詰まらないから、作業効率は良いし、切り口はカンナをかけたようです。
驚き!速い!
一般に縦切りは、刃が入りにくいけど、これは、考えられないくらいの切れ味。
これだけの厚い堅木が、
最後まで横ブレせず、
真っ直ぐ入っている!
精巧に切れるから切り口もキレイだね。
これなら大きめに挽かなくてもいいね。
刃という部分的な改良ではなく
電動工具(丸鋸)全体の問題として考えました。
[切断の時、電動工具に負担がかかる→横ブレする
→切るスピードが落ちてくる]
この問題に対し、
どういう刃を考案すれば良いのかを研究をしました。
幾何楽堂●きかがくどう●日光霧降高原に工房を備える、まるで扉自身が引力をもっている「入りたくなるドア」創作を軸に、
空間プロデュース、日光の町づくり等も手がける。現在、「フィンランドのくらしとデザイン ― ムーミンが住む森の生活」美術展の中で、樹齢1000年の杉材を素材に、
空間をつなげるドアを製作中。国内は元より海外で仕事をする際にも、様々なメーカーのチップソーを使っている。
杉の夏目もスパッと切れる。
こんだけの厚みでも軽いのぉ。
ケヤキでこれだけ切れると、
杉やヒノキならもっとやな。
杉の夏目は特に柔らかいから、
どうしても木目が千切れるけど、
これは違う! スパッとキレイや。
わしら、色々な研ぎ屋にだしたけど職人によって、
これだけ切れ味に差がつくのか!
と思うほど、全く違う鋸になる。
わしも職人だからわかるけど、これは日々技を研究し、
身につけてきた職人やな。
そんな風に仕事をしてきた人は凄いのぉ。
道具の切れが良いと大工は助かるわ。ほんまに。
例えば、トマトを包丁で切る場面をご想像ください。
よく切れる包丁は、柔らかい繊維もスパッと切ります。
木材も同様に杉の夏目のように、
特に柔らかい部分の方が、
切れ味の違いがわかるかと思います。
清水工務店●しみずこうむてん●社長は大工(親方)、二代目は設計士。構造材に紀州産を使用。木の性質を活かす手刻み加工、丈夫で安心出来る構造(耐震等級2以上)などをこだわりとする工務店。大工さんならではの高い技術と設計力を活かし、「住まい手」の要望にきめ細かく対応する。注文住宅で高い評価を受ける。
▲上記の本「全国木の家リフォームの達人たちのコーナー」に二代目が掲載される。