2023.03.23

[連載BLOG2話]サスティナブルな製品は「市場を育てる」ことからはじまる

脱均一へ

左:無塗装  
右:ウッドロングエコ塗装


ウッドロングエコの販売をはじめ、一番多かったご意見が「色ムラになった」「思っていた色とは違う」というものでした。

「色ムラ」というご意見に関して

ウッドロングエコは一般の塗料のように顔料で着色するわけではないため「この色味は木の成分がウッドロングエコの成分と反応しできた色です」といってもなかなか理解してもらえません。

例えば
「レンコンを鉄鍋で炊くと、レンコンの灰汁成分(タンニン系)と鉄が結合して、黒くなるでしょ」とご説明しても、


フッ素加工の鍋が主流の中、自然素材ゆえの色変化に対してなかなかご理解いただくのが難しいところです。



「思っていた色と違うというご意見に関して

次に、「思っていた色と違う。」「このままのずっとこの色を維持したい」というご意見に関してです。これらのご意見は、施主様から設計士さんや工務店さんに伝えることが多いようです。

自然の色は複雑で常に変化する
樹種によっても産地によっても木の成分は異なるため、当然、人間が頭で描いた色にはなりません。木の板一枚一枚をよくみると、微妙に色が異なります。また、同じ枝から生えた葉っぱもよくみればそれぞれ違う「緑」であるのと同様です。

無垢のフローリングの色味は均一ではない
実は無垢のフローリングでもよくこのようなご意見をいただきます。「一枚一枚節のある場所が違う」「板によって色味が違う」他。

如何に現代人が自然から離れてしまったのかよくわかる声です。近年、自然を受け入れらない人が増え、クレームを少なくするために工業生産による均一化がはじまったの?と思うことすらありました。

空間全体で色味を魅せる



そんな現代人にどのように説明すれば理解していただけるのか。小川耕太郎は、友人である設計士 田中大造建築設計事務所 一級建築士事務所さんに「実際につかう場面を想像できるような展示ブースをつくってほしい」と相談をし、できた展示ブースがこれです。




小川社は過疎地にある民家で仕事をする小規模事業者ですが、予算をだすところは思いきりがいい面があり、このブースをつくるために、当時としてはかなりの予算をつぎ込みました。

その結果、会場ではブースを触りに来る人で、人だかりができるほどでした。「人は本能的に安全なもの、心地よいものが判る!」ものだと実感しました。特に東京ビッグサイトのような人工的な空間にいると、自然素材100%のもつ素材感はとても目立ちます。

これらのブースをスタッフだけで設営および改修ができるよう、社内で設計の改良を重ね、様々な場所にこの展示ブースをもって会場で設営する。そんなことこそ販売戦略のひとつだと考え、自然素材を体感できるプチリアル体験の場をひろげました。

ご批判の奥底に潜む声に耳を傾ける


今までの市場にない商品をつくって売りたいという人は、まずは、自分で主導権を握って作り始めていかなければ、その商品は生まれません。小川社の場合、小川耕太郎がその役割を担ってきました。商品が売れるまでは試行錯誤の連続なので、時には社内から不満がでたり、批判的なご意見をたくさんいただくこともあります。

しかし、まだ市場がつくられていない段階なので、そのような不満や批判は必要以上に耳を傾ける必要がないことがほとんどです。


大切なことは2つ。

一つ目⇒会社理念に合致する商品なのか?という点。

二つ目⇒お客様のご意見の奥底にある声に耳を傾けているのか!という点。

なぜなら、それらのご意見やクレームの中には大きなヒントもあるからです。小川社の提案した展示ブースに驚くほどの反響があったのは「塗り板サンプルでは色ムラが目立って不安でも、建築全体で色味を見ると、そのムラは自然素材ならではの色調となるのでは?」という小川耕太郎の気づきが、お客様にも共有されたからではないでしょうか。

ウッドロングエコ仕上げの外壁の家を建てた地域で広がるという現象

ウッドロングエコは屋外で使う塗料なので、通りからでも色味や経年変化がみられます。そのため、ウッドロングエコ仕上げの外壁の家を建てた地域でウッドロングエコが広まるという現象がありました。下記の写真は、ウッドロングエコ仕上げの外観が日光付近で広がった事例です。

日光周辺の店舗にウッドロングエコ仕上げの外観が増える(設計・施工:幾何楽堂さま)




今まで、ウッドロングエコで塗装した色味に関してクレームを受けていたのは、外壁の全体像がイメージできないからではないかと考えるようになりました。

木の外壁は、新建材の外壁にくらべると紫外線などによる経年変化がはやいため、それを経年劣化としてとらえる人が非常に多いです。しかし、実際に住んでみると、それは劣化ではなく、無垢材はそのように色変化するものだということがわかります。経年変化と経年劣化の区別を伝えることが必要です。

観光地へ行き、木の外壁が立ち並ぶまちなみでは、人は木の経年変化を受け入れています。しかし、ツルツルした現代建築の隣に自然素材が並ぶと、劣化していると勘違いする傾向があることに気が付きました。

▲木の外観が立ち並ぶ 伊根町伊根浦伝統的建造物群保存地区 伊根の舟屋

サスティナブルな製品は「市場を育てる」ことから始まる

「サスティナブル」という考え方が定着しつつある現代では、今後、ウッドロングエの良さをを理解してお使いいただける方が、さらに増えていくと推測しています。「つかって 良かった」とのちに言っていただけるように、カタログやHPなどについては以下の点を改良しました。

木の腐りを防ぐためには、ウッドロングエコ単体では完全でないことを伝える。どのように施工すれば長もちするのか事例を伝える。

木材防護保持剤としての役割だけでなく、建物全体でどういった印象になるのか、イメージしやすいよう、様々な施工例および使用例を紹介




サンプルをご請求されたお客様や、お買い上げいただいた方に上記の内容のURLをお送りすることで、ウッドロングエコの特徴や注意点などについても、より深くフォローできるようになりました。また、それらがスマホでも見れるように改良しました。電話での細やかな対応も心掛け、サスティナブルな製品を育てることに力をいれています。

それらの積み重ねにより、小川耕太郎がいう「国産材を使うマーケットが拡大した、木を使って、植えるという持続可能な未来」へと歩むことが、本来の「マーケットイン」に繋がると考えています。小川社が考える「本来のマーケットイン」とは、潜在的なニーズを掘り起こし、新たなマーケットを啓蒙し、時間をかけて育てることにより、「安全安心な環境」へ繋げるということです。

このようなことが続けてこられたのは、国内での様々な使用例をご紹介するにあたり、設計士様や施工事業者様、お施主様にご協力をいただけたからです。この場を借りてお礼を申し上げます。





次回は、本格的な自社実験をはじめるお話をさせていただきます。

つづく

(文章)小川百合子(おがわ・ゆりこ)
小川耕太郎∞百合子社 取締役。 主な仕事は持続可能な商品の一般化のためのPR。 1998年、山一證券が倒産した年に、夫婦で起業。地域の生物資源と産業(技)と自然が循環できることをコンセプトとした持続可能な商品づくりを目指す。


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サスティナブルな5つの行動(ウッドロングエコversion)

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