2023.04.03

[連載BLOG1話]海外で実績をもつ「ウッドロングエコ」との出逢い

お陰様で、2002年にウッドロングエコの販売代理店になり、今年で約21年になります。今もトライ&エラーの繰り返しですが、そのプロセスは楽しさでもあり苦しさでもあります。そのような経験を積み重ねながら、小川社なりに「外壁やデッキの国産材需要を伸ばす」ことを目標と定め、屋外につかう安全な木材防護保持剤を販売してきました。

拙い文章ではありますが、小川社が取り組んできた「サスティナブルな行動」を自分の言葉でお話いたします。若い方にも響くとうれしいです。どうぞ、お付き合いのほどよろしくお願いします。




インター入口の木製遮音壁にウッドロングエコが塗布されていた

▲和歌山県T市インターチェンジ遮音壁にウッドロングエコを塗布

ウッドロングエコの販売代理店になったキッカケからお話します。

2001年か2002年頃、ウッドピア松坂(協)にて「三重県の木材をもっと売るためにはどうしたらよいか」という会議が開催され、小川耕太郎が参加しました。

会議の中で国産材利用の具体例として、和歌山県T市インターチェンジの遮音壁などの国産材利用が挙げられていました。そしてその塗装にはウッドロングエコという安全な塗料をつかっているという情報をききました。会議終了後に輸入元を訪ねて詳しい話を聞いたところ、良い商品だということがわかったため、「これは広めたい!」と思い販売代理店になりました。

代々、北欧の木こりファミリーが伝えてきた

ウッドロングエコのルーツは、古来、北欧の木こりたちの家族に代々伝えられてきた木材防護液。当時は今のような粉末ではなく液体でした。カナダへ移住した一族が、歴史的文化財であるログハウス修復のためにこの木材防護液をつくり、後に商品化したものがウッドロングエコです。

この修復を機に、文化財修復の専門家たちから、安全性、簡易性、長期の防護効果の観点から、使用したいという依頼がくるようになりました。ビジネスとは無縁だったファミリーが、自然保護に役立つならと事業化を決意。

液体から現在の粉末の形状に改良し、無毒性試験など所定機関の検査を通過させ、自然に役立つことを目指すビジネスをスタートさせました。

ストーリー性をもつ商品ではありますが、事業としてはなかなか説明が難しい商品です。

小川社の方針は「今、消費者になにが求められているのか」をつくるマーケットインという手法ではなく、「我々の子ども達や子孫に健康で安全な暮らしをしていくためにはどうすべきか」というプロダクトアウトという手法で商品開発や販売経路をつくっていく会社なので、小川耕太郎はこの商品をつかう市場をつくっていこうと決意しました。

屋外につかう塗料の安全面の3つの基準

小川耕太郎∞百合子社では1999年より「未晒し蜜ロウワックス」という木材用の塗料を販売しており、その商品について説明していく中で、化学物質に敏感に反応するお客様から「屋外に塗る塗料も安全なものを塗りたいのでなにか良いものはないか」という声を多くいただいていました。

屋内に対する安全性のルールとして、シックハウス対策のための規制を導入した改正建築基準法が制定されたのは2003年でしたが、屋外につかう建材の安全性への意識はまだまだ低い状況でした。

しかし、当時から小川社では、屋外につかう木材防護保持剤の安全面の3つの基準を決めていました。

①換気を通して揮発性物質が室内にはいっても安全であること
気密性の高い建物が増え、換気扇を通して屋外につかう建材の揮発性物質が室内にはいる可能性もある。室内には赤ちゃんや化学物質に敏感な人がいることも想定し、外部につかう塗料も内装と同様の安全性が必要である。

②建物を建てた後の土壌の安全性

③土壌を通して地下水汚染がないこと

安全面の基準をつくった「3つの理由」

ウッドロングエコの販売開始当初(2002年)は、屋外に使用する木材で安全性や人や環境への配慮を謳う商品はほとんど見られませんでした。屋内さえ配慮すれば外部まで気を遣う必要がないという考え方が主流だったように思います。私たちが安全面での基準をつくった理由は3つあります。

朝日新聞
(2003年1月24日付けの記事)

①換気を通して揮発性物質が室内にはいっても安全であることの基準を定めた理由

販売代理店となった一年後(2003年)に「建物の気密性が高くなり、換気が義務付けられたため、屋外塗料の揮発成分が換気扇を通して室内に入り込み、シックスクールが発生した」という報道があったことです。少しずつではありましたが、屋外につかう安全性も問われるようになってきたと感じている頃でした。

②建物を建てた後の土壌の安全性 ③土壌を通して地下水汚染がないことという基準を定めた理由


土壌が有害物質により汚染されると、その汚染された土壌から有害物質が地下水に溶け出し、人や生物の健康に影響を及ぼすおそれがあることです。

これまでは土壌汚染について明らかになることは少なかったですが、近年、企業の工場跡地等の再開発等に伴い、重金属、揮発性有機化合物等による土壌汚染が顕在化するようになりました。この問題に関しては、アメリカやドイツでは早くから取り組みが行われてきているため、簡単ではありますがアメリカとドイツの対策を説明します。



土壌汚染対策に関する世界の動き

アメリカ

1980年:「包括的環境対策・補償・責任法(通称:スーパーファンド法)」が施行。

宅地などの開発を行う業者が、土地を汚染した場合の補償金を一定額積み立てておくことが義務付けられ、有害物質に関与したすべての潜在的責任当事者が、汚染された土壌の浄化費用を、過去に遡って負担しなければならないという法律で、これまでの土壌汚染問題に対して大きな成果を挙げました。アメリカのスーパーファンド法では約800種類の物質を有害物質として指定しています。

ドイツ

1999年3月:「連邦土壌保全法」が施行

1999年7月:「土壌保全汚染跡地令」が施行

この2つの法令の施行によって、ドイツ国内の州でバラバラだった土壌汚染対策が統一されています。

EU諸国

2001年10月:消費者への(※1)クレオソートの販売禁止の指令を採択

これは日本での規制にも影響を与えました。

日本

2003年 :「土壌汚染対策法」(環境省)が施行

2003年:公共事業工事の木材に塗布する「クレオソート油」の使用禁止

(※1)クレオソート油
原料の石炭に由来する多環芳香炭化水素(PAHs)を多く含有することから、「おそらく発ガン性がある物質」に分類され規制がかかっている。主に、枕木、木製電柱、床下の木材の一部や外壁などに塗られていた防腐剤


塗り直し不要なら
国産材需要が高まる

左:無塗装 右:ウッドロングエコ塗装

販売当初は、 ウッドロングエコの日本での事例が少なく、「屋外で日本の木に屋外で安全に使うためにはどのようにすればよいのか」を試行錯誤しながら、検証していくと宣言をして販売をしました。

当時の外壁材はサイディングパネルが主流で「木の外壁なんて売れるわけがない!まして、こんなヘンテコな色味なんて施主様が嫌がるに決まっている」との声が圧倒的に多かった時代です。


小川耕太郎は「この色味は自然そのものの色なので、木の経年を受け入れればなんていうこともない。塗料のメンテナンスコストが抑えられれば、今後、地域材にウッドロングエコを塗った外壁が増える」

という指針をしめし(根拠もない自信ともいいますが)説明をしながら売るというスタイルで販売をはじめました。説明といえども、当初は日本での事例は少なかったので、お客様の事例の写真の提供を依頼したり、倉庫で経年変化の様子をテストしたりというものです。販売当初のお客様にはたくさんのご協力をいただき助けていただきました。

▲杉材にウッドロングエコを塗装したウッドデッキと外壁(塗布後9年目)


(文章)小川百合子(おがわ・ゆりこ)
小川耕太郎∞百合子社 取締役。 主な仕事は持続可能な商品の一般化のためのPR。 1998年、山一證券が倒産した年に、夫婦で起業。地域の生物資源と産業(技)と自然が循環できることをコンセプトとした持続可能な商品づくりを目指す。

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