2022.12.28
[vol.4]100年前の住宅に学び100年後のスタンダードをつくる
魚沼杉/UC(Uonuma Cedar)材
と名付け、ブランディングをする
新潟県の南部に位置する十日町市は、「魚沼コシヒカリ」の産地として全域で稲作が広くおこなわれている地域で、隣接する自治体には長岡市や魚沼市などがあります。地域材をブランディングするにあたり、「十日町市」という地名よりも、「魚沼」の方がコシヒカリや日本酒の生産地として全国的に知名度が高いことから、その名を冠して「魚沼杉=UC材(Uonuma Cedar)」と名付けました。
魚沼杉という言葉は、
・手入れのされた山
・きれいな水
・おいしい米
などを連想させます。
森林は河川を通して海とつながっています。日本は海に囲まれた列島で、列島中央部は、起伏に富んだ急峻な山岳地系となっており、豊かな森林におおわれた場所は水資源の供給源を成しています。
森林の水源かん養機能は①水資源の貯留 ②洪水の緩和 ③水質の浄化 ④土砂の流出や放火するダム的役割(山火事等の災害を少なくすること) がといった機能があります。よって、地域の木材を循環させることによって、山に手が入るため豊かな水が流れます。
はじめて「魚沼杉」と聞いたとき、川上から川下までの生業をつなげている 情景が目に浮かびました。林業家が山林に入り山の手入れをしている場面、伐採し木の家が建つ場面、手入れのされた山林からおいしい水が流れる場面、山から引いた水で育ったお米、つやつやなお米 などなど。
別名をUC(Uonuma Cedar)材と名付けたことで、他の産地と被らず、かつ今の人が共感する印象を残すところもすごいな、と思います。
魚沼杉にウッドロングエコを塗布すると他の地域の杉より黒っぽく変化する。
ウッドロングエコを塗布して出る色味は、ウッドロングエコの成分に木の成分が反応し色変化が起こったもの。同じ杉でも産地や自然条件により成分が微妙に異なるため、当然、それぞれに色味も変わります。魚沼杉の場合は「茶褐色」というより「黒っぽい色」に変化するのが大きな特徴です。この独自の風合いは、モダンな住宅から歴史を感じる古民家までなじみます。
歴史ある古民家にも調和する魚沼杉
日本全国、田舎と呼ばれる地域では過疎化が進み空き家が増えています。この家は都会と新潟の二拠点生活をする施主様のためにリノベーションされた家です。古民家独自の趣と周辺の竹林や紅葉などの土地に根付いた植生とその土地の環境はそのまま生かした上、安全性を確保した構造強度、エネルギー効率を考慮した断熱性は現代の技術を用いた設計です。
歴史を感じる静かな佇まいは、これから先もSIA inc.の哲学とともにこの地域の風景と溶け合っていくことでしょう。
[SIA inc.の哲学]
100年前の住宅に学び、
100年後のスタンダードをつくる。
そのために、
山を守り、街並みを整える。
林業から製材そして建築設計、ものづくりと。
100年後のスタンダードを目指し、街並みを整える。
「野遊びを通じて自然と人、人と人がつながる」というコンセプトを掲げ、新潟市西蒲区に新しく生まれた街「野きろの杜」は、約6,600坪の広さを誇り、スノーピーク×SIA inc.×新潟土地建物販売センターの3社が協働でまちづくりを行う事業です。
2022年12月に第一回の街びらきがおこなわれたこの街は、新時代の街とでもいうのでしょうか。34街区ある居住エリアは108坪の平屋エリア+60坪と70坪の戸建エリアで構成され、中央にはスノーピークが監修した「Life Site野きろ」と呼ばれるコミュニティー広場が設けられています。
外周にはゲストハウスや複合商業施設、賃貸物件が建設され、広場には焚火ができる場が設けられています。
戸建の外壁には新潟産の杉(魚沼杉も含む)をつかい、焼杉やウッドロングエコ塗装の外観が目立ちます。50年後、100年後の地域の風景を見据え、景観に関する建物のルールや環境に配慮したガイドラインも定めています。
石田氏が語ってきた「地材地建」「山を守り街並みを整える」というビジョンが次々に具体化しています。地域材が活用されることで、
・地域の山が整備される
・田んぼを潤す「豊かな水」がつくられる
という良い循環が生まれます。
「魚沼米」を連想させる「魚沼杉」も、地域を有機的につなげていく姿がみえます。
丸太で計算すると、年間1000㎥の魚沼杉をつかい
「地材地建」をすすめ、持続可能な社会をつくる
以上、4話にわけてSIA inc.の取り組みをお伝えさせていただきました。弊社の小川耕太郎がはじめて石田伸一さんを知ったのは2019年でした。新潟の製材所から「小川社と同じような商材(地域材+ウッドロングエコ塗装の外壁)をつくり売っても良いか?」というご質問を受け、小川耕太郎が新潟の谷内製材へ塗り方などの確認いきました。その時に製材所の方から「地材地建」を目指し、魚沼杉をふんだんにつかう設計士さんがいるというお話を聞き石田氏の活動を知りました。
その後の石田氏の活躍は目覚ましく、拡がり方も今までの木材業界のやり方とは明らかに違うのがよくわかります。一年前(2022年)になりますが、「この規模の製材所で年間どのくらいの木材を製材するのか?」と質問をしたところ、年間で丸太で計算すると約1000㎥だとというお返事をいただきました。あれから1年以上たち、野きろの杜の建設がはじまって、現在はさらに魚沼杉の需要が伸びていることが予測できます。
川上~川下までつなげた真剣かつ遊び心溢れるコミュニケーション力と発想、そして経営力は、今後、日本の地方を変える力をもっています。
2022年12月に小川耕太郎は「野きろの杜」の街開きへ見学にいきました。その際に撮った写真を眺めて、広大な規模で地域材が外壁につかわれているのを目の当たりにし、改めて石田氏の本氣度が響きました。
文:小川百合子 小川耕太郎∞百合子社 代表取締役。 主な仕事は持続可能な商品の一般化のためのPR。 地域の生物資源と産業と自然が循環できることをコンセプトとした持続可能な商品づくりを目指す。
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連載BLOG
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【ウッドロングエコ×地域材】をコンセプトとした、インタビューBLOG「ウッドロングエコと人」はこちらからご覧ください。