2022.12.28

[vol.2]より良く年をとる建築とは

“より良く年をとる外壁のポイント”は
素材感・設計デザイン・技

SIA inc.は「地産地消」ならぬ「地材地建」の考え方のもと、以下の哲学を基盤とした地域材のブランディングを進めています。

[SIA inc.の哲学]

100年前の住宅に学び、
100年後のスタンダードをつくる。

そのために、
山を守り、街並みを整える。
林業から製材そして建築設計、ものづくりと。

暮らしに心地よさと愛着を

【双璧の家】 設計:石田伸一建築事務所(以下、SIA inc.)/ 魚沼杉とSOLIDOを利用したファサード。和のテイストにもよく合う、魚沼杉の押縁工法の縦張り。外部の木はウッドロングエコ塗装。
設計:SIA inc. 魚沼杉板外壁(UCウォール)を鎧ばりと縦ばりの押縁工法、魚沼杉ルーバー(UCルーバー)縦使いと、横使いを利用したファサード。 /外部の木の塗装:ウッドロングエコ仕上げ
設計:SIA inc. 魚沼杉板外壁(UCウォール)をよろい張りで張った外壁。 
外壁の塗装:ウッドロング仕上げ

一般に屋外につかう木材の中で人目に触れる箇所といえば
・外壁材
・ルーバー
・ウッドデッキ
・ウッドフェンス
・格子 
などがあります。


上にあげた箇所は、高度成長期にはいる前までは無垢材がつかわれていましたが、現在はほぼ新建材に変わりました。特に無垢材の外壁やデッキやフェンスなどは、無垢材ならではの紫外線による色変化や小さなワレなどといった自然現象による経年変化があるため、これを経年劣化と誤解しクレームになるケースが非常に多くなり、大工さんすら無垢材をつかうことを避けてきた時代があります。



無垢材が避けられてしまう理由の一つに、現代人にとっては無垢の外壁よりも新建材の外壁(窒素系・樹脂系などの素材でつくられたもの)の方が見慣れているということがあるのではないかと考えます。


現在では圧倒的多数になった、工場でつくられた新建材のツルツル外壁は、わかりやすく例えると「美魔女」。ある時期までは新品同様の風合いを保ち、年を重ねた様子がみえません。メーカーはいつまでも「新品のように美しく」という点を重視し改良を重ねてきました。


一方、無垢材は自然素材なので紫外線によりシルバーグレーに変化します。そして湿潤や乾燥を繰り返すことにより、小さなヒビがはいります。この自然現象を「経年劣化」と誤解しクレームになることすらもあります。このクレームをさけるために、戦後はUV塗装や外壁用の防腐剤を木材に塗装するケースが増えました。数年に一度は塗り替えるので、塗料代の他に足場代がかかっていました。


しかし、田舎や建物や歴史的建築物をみると、無垢の外壁(ほぼ無塗装が多い)は今でも健在なところが多く、実は経年による変化を当たり前のものと捉えれば、無垢材の「塗りなおし」という作業をなくすことができることが分かります。その分メンテナンス費用も抑えられ、無垢の外壁は長い目でみれば高いものではなくなります。仮にリペア(修繕)が必要なケースがでてきても、無垢の板ならば部分修繕ができます。新建材は便利ですが、型番が終了したら全部張り替える必要があります。


「建物」は永くつきあうものなので、トータル的に考え、持続可能な素材にチェンジすることが大切だと思います。



▲京都伊根の舟屋の街並み。昔から杉の外壁が張られています。

ウッドロングエコを塗布した木材は、無塗装の木材のおおよそ2.2倍長もち

ウッドロングエコ(屋外用 木材防護保持剤)は薬品ではないので、長もちさせるためには、施工の工夫や屋外用の木の選び方 他諸条件が必要ですが、「経年変化」を当たり前として受け入れられる方や、「環境に配慮した住宅を建てる方」に選ばれています。大きな特徴は一度塗れば、基本的には塗りなおし不要という点です。


この商品は、日本の研究機関で検査が行われ2003年に以下の効果が証明されています。

腐朽試験の結果(除く溶脱検査)では、白色腐朽菌(カワラタケ)に対してはJIS規格防腐剤と同じく(質量損失3%以下)強い抗菌性を示し、褐色腐朽菌(オオウズタケ)の場合は、約30%の質量損失が伴うものの、同様に抗菌性が確認され、ウッドロングエコを塗布することで無塗装木材のおおよそ2.2倍長もちする。



SIA inc.の建物の外観には、ウッドロングエコを塗装している事例が多く、施主様には、無垢の外壁に対するご理解いただくために、前もって説明をし、無垢だからこそ「経年劣化」ではなく「経年優化」へと変わりより良く年をとる素材であることをお伝えされています。

自身のブログで「経年優化する杉板外壁の美しさを勧める理由」を記載







「より良く年をとる」建築とは(バウハウスの授業より)

話が飛びます。「すべての造形活動の最終目的は建築である」「芸術家と職人の間に本質的な違いはない」という理念のもと、1919年にドイツに誕生した芸術学校「 バウハウス」の授業の中でも「建築は仕上げて終わるが、風化がさらにその仕上げをする」というメッセージが残されています。

以下『時間の中の建築(出版:鹿島出版会)より抜粋』

古代の建物の表面には自然の影響が刻まれ、周囲の自然の移り変わりが読み取れるような堆積物が残っている。建築の「仕上げ」を削りとるなかで、風化は自然の力で建築を「仕上げる」。

風化は引き算によって、前からそこにあったものを生み出す。こういう風化の働きは、芸術と自然の役割を逆転させている。デザインにおいては、芸術は自然を<具象化する>力、あるいはその具象化の働きそのものと考える。しかし、建物の生涯あるいはその生存する時間においては、自然は「完成された」芸術作品を<再創造>する働きなのだ。

建築は、建てられたのちは、時の経過とともに建つ土地に影響され、建築の色や表層の素材感は変貌する。また逆に周囲の土地も、建物の影響で変貌するのである。


この本では、風化によって土地になじんだ「家」「建物」が、その土地の風景をつくるという内容が何回もかかれています。つまりシミ一つない建築をよしとするのではなく、風化は自然現象として受け入れ味わいを楽しむ。そのためにも素材感と設計デザインと持続的に修繕できる材料の調達が重要になってきます。


SIA inc.が提案する「地材地建」「経年優化」と共通するものを感じました。

生まれ育った集落から学ぶ「普通のこと」

▲石田氏が生まれそだった新潟県十日町市の集落

これほどまでに「魚沼杉」にこだわり地材地建をすすめてきた石田氏の情熱の源は、彼の生まれ育った新潟県十日町市の集落にあります。この集落は27軒のうち25軒が木の外壁、新建材のサイディング張りはたった2軒だったそうです。

石田氏の祖父が大工だったということも関係しているのでしょうか?石田氏は「地域の山の木をつかって建てることは普通のこと」として受けとめてきました。風雪にさらされた木の外壁が、この集落の風景と一体化して景観をつくってきたのでしょう。

古民家リノベーション(下田の家) 設計:SIA inc. /外壁:UC材(魚沼杉にウッドロングエコを塗装)/2022年グッドデザイン賞受賞

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(文章)小川百合子(おがわ・ゆりこ)
小川耕太郎∞百合子社 代表取締役。 主な仕事は持続可能な商品の一般化のためのPR。 1998年、山一證券が倒産した年に、夫婦で起業。地域の生物資源と産業(技)と自然が循環できることをコンセプトとした持続可能な商品づくりを目指す。

【連載ブログ】

【ウッドロングエコ×地域材】をコンセプトとした、インタビューBLOG「ウッドロングエコと人」はこちらからご覧ください。

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