2022.12.27
[vol.1]買い物ついでに「魚沼杉を知る」、場づくり。
ファサードに魚沼杉を張った複合商業施設「NEST MEIKE SHINMEI」
2021年、新潟市女池神明の街中に、元ヤマト運輸の倉庫をリノベーションした複合商業施設「NEST女池神明」がOPENしました。外壁のファサードに、UC材(UC Factoryで製材された魚沼杉)にウッドロングエコを塗布した材が張られているため、遠目からも目立ち、女池神明のおしゃれスポットになっています。
外壁をよくみると、下は「よろい張り」、上は「ファサードラタン張り(すのこのように張る外壁)」という2つの張り方で変化をつけています。
ちなみに元物流倉庫はこんな感じでした。
設計デザインにより、UC材の素材感が際立ち、スタイリッシュな印象をうけます。夜になると、
外壁上部は、ファサードラタンという手法で張っているので透け感があり、玄関回りの外壁はインナーライトにより照らされ、よろい張り独自の形状により陰影ができ、シックなムードに変わり夜間でも目に留まります。
この倉庫のリノベーションの設計は石田伸一建築事務所(以下、SIA inc.)の代表取締役の石田氏によるものです。SIA inc.が設計した建築は「地産地消」ならぬ「地材地建」をかかげ、特に屋外に地域材をつかう建築が多いのが特徴です。外壁は人の目に留まるため、プロモーション効果が高く、また、人の集まる複合商業施設でつかうことで、地域材に興味を抱かなかった層にも、魚沼杉を知ってもらうきっかけになるからです。
NESTに設置したベンチの座面は、住宅に使われる角材にウッドロングエコを塗ったもの使用しています。製材所の人がみると、実によく考えられたデザインだ!と絶賛すると思います。なぜなら、一般に建築用の木材は長さ3m、4mでカットすることが多く、カット後にでた半端な角材をこのような用途に使えればフードロスならぬウッドロスを減らすことにつながるGOODデザインだからです!
新潟は金物の名産地!角材ベンチの脚も新潟の金物です。
新潟といえば「ものづくりのまち 燕三条」が有名で、TVドラマ「下町ロケット」のロケ地になったことも記憶に新しいのではないでしょうか。木材に限らずできるだけ新潟産のものをつかうという考え方が素敵です。
買い物ついでに「魚沼杉を知る」
NEST女池神明は、外観だけでなく内装にも魚沼杉が施されています。商業施設につかうことで、地域材に関してまったく関心がない人にとっても魚沼杉を知るきっかけになっています。中へはいると、店内は魚沼杉の合板で仕切られています。
合板の種類は2種類。一つはUC plywood(全層魚沼杉合板)、二つ目はUC plywoodマホガニー(表と裏に0.8mmのガボンマホガニー中の合板は魚沼杉1.65mmで構成された合板)です。
ここ2年は、コロナ感染症対策による規制で半導体だけでなく建材の入荷が遅れたり、更に、ウッドショック、ウクライナ侵攻など社会情勢の変動が非常に激しく、海外の合板価格や供給も不安定です。そんな事情が重なりあい、地域材をつかった合板は比較的安定した価格と供給という点、SDGsの観点からも見直されています。
店内に入っているテナントも独自のこだわりをもつ新潟のお店ばかりです。何軒かご紹介いたします。
写真①:異業種のクリエーターが集うNEST女池神明のコワーキングスペース / 写真②:コワーキングスペースのテーブルもUC材 /写真③:床もUC材「UC BOX(魚沼杉にウッドロングエコを塗布した小屋)の実物展示も。サイズは5種類。[伐採+製材+設計+施工]を自分たちでおこなうモノづくり一環システムで生産。在宅ワークなどに最適。
より良く年をとる
昔も今も、古い街並みの外観は自然素材が多く、「より良く年をとる建物」がその街の魅力につながっています。新潟市は政令指定都市ですが、街路樹の銀杏と魚沼杉でつくった外観の「NEST」の存在は、この通りの景観をつくっていくのでしょう。
また、ここに集う新潟発の個性的なショップやそれらにアンテナを立てるお客様、コワーキングに集まるクリエーター達が「まち裏文化」をつくっていくのではないでしょうか。
*「まち裏文化」とは→街の歴史、コミュニティー、景観、ストリートの裏側から生まれる「文化」
(文章)小川百合子(おがわ・ゆりこ) 小川耕太郎∞百合子社 代表取締役。 主な仕事は持続可能な商品の一般化のためのPR。 1998年、山一證券が倒産した年に、夫婦で起業。地域の生物資源と産業(技)と自然が循環できることをコンセプトとした持続可能な商品づくりを目指す。
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【ウッドロングエコ×地域材】をコンセプトとした、インタビューBLOG「ウッドロングエコと人」はこちらからご覧ください。