2023.06.21

3話 GOOD-TIME PLACEのコンセプトを公園事業へ 

民間と連携した公園の
リニューアル事業が加速

全国の都市公園のリニューアル事業が相次いでいます!一体どのくらいリニューアルされているかというと \58箇所(2023年3月末時点)/とか。

この事業が促進されたきっかけは、2017年に施行された「Park-PFI(公募設置管理制度)/国土交通省」だとか。

日本に10万近くある都市公園ですが、近年、①少子高齢化・人口減少 ②地域経済の衰退と財務の悪化 ③価値観の多様化 などの課題に直面しています。なんだか、どの業界も行き詰まりを感じますね。

Park-PFIは、そういった課題を解決するために、民間力(資金力・発想力・地域力 他)を活用し、民間事業者が都市公園内にcafeなどの収益施設を設置し、その収益で公園を整備するといった公民連携事業です。



公園だからこそできる
「地域性の表現」が大切!

出典:国土交通省局 都市公園の質の向上に向けたPark-PFI活用のガイドライン

しかし、この制度の解釈をまちがい、公園が飲食店街やショッピングセンター同様になってしまうケースもでています。都市公園は公共インフラなのでこれではちょっと・・・。

という課題もでており、施行後6年経ち、「公園だからこそできる地域性の表現」が重要といわれるようになりました。

東三河で唯一人口がふえている「豊川市」は、さらにまちを活性化するために、総合公園「赤塚山公園」を整備&リニューアルするにあたり、「Park-PFI(公募設置管理制度)/国土交通省」の制度を導入しました。

この公募に手をあげたのが、暮らしを豊かにする地域工務店(株)イトコー様(以下、略イトコー)です。かねてからPark-PFIに興味があり、お話を伺いにいきました。(小川百合子)


年間約41万人が利用する
「赤塚山公園」。
地元利用率が約82%

赤塚山公園の素晴らしいところは、地元の利用率が約82%というところです。また、休日は市外や県外からの利用者も多く、年間で約41万人(約1138人/日 調査:2018年)に利用されています。

東三河で唯一人口が増えている豊川市だけあって、利用者も子育て世代が多いとか。

|利用年齢層 |

・休日:1歳~12歳 53%   
・平日:1歳~未就学児  45%

※ここでは親や祖父母の年齢は加味していません。

| 滞在時間 |
1時間未満 40%
1~3時間未満 51%

資料:豊川市赤塚山公園再生基本計画 パブリックコメント資料より抜粋

|公園施設内・人気スポットベスト3|

  • 動物とふれあい体験「アニアニまある」
  • 淡水魚専門の水族館「ぎょぎょランド」
  • 大きな噴水がながれる「水の広場」

赤塚山公園に行きたくなる
「動機」と「賑わい」をつくる

(株)イトコー 田中康夫 (以下、略:田中))
「赤塚山公園」の中でも、特に人気が高い「ぎょぎょランド」と「アニアニまある」「水の広場」の一体感やゆるやかなつながりを大切に配置することを考え、イトコーが提案したイメージ画がこちらです。

百)

着工前と完成イメージを比べると・・・一目瞭然!各施設のつながりが見えます!

伊藤博昭 代表取締役)
パブリックコメントで一番多かったのが「飲食・物販施設」が充実していないという意見です。そこで、飲食の提供ができる「あかつかテラス」を提案しました。

一般に収益施設というと、その施設を利用した人のみを対象としていますが、公園は公共のインフラなので以下のコンセプトを掲げました。

・赤塚山公園を散策したくなる休憩所
・自然景観を楽しみながら過ごせる居心地
・飲食の提供(キッチンの設置)


このコンセプトは、イトコーの家で取り入れている「GOOD-TIME PLACE(アウトドアキッチンつき半外空間)」の考え方(自然を身近に感じながら過ごす暮らし・誰もが気軽に立ち寄れる場)と非常に共通するものがあります。


田中)
各施設を繋ぐ、ゆるやかな一体感がなければ、公園にきた来場者は施設の目的のみの利用になりがちです。そこで、駐車場から「ぎょぎょランド」や「アニアニまある」までの途中に「あかつかテラス」の設置が必要だと考えました。


「あかつかテラス」の周辺には芝生や「ぎょぎょランド」「アニアニまある」にいくまでの路があります。この空間全体を「一つのエリア」として、エリアマネージメントを考えることが大切です。このエリアには「人中心の交流の場」が必要だと考えました。



しかし、公共の空間なので、なかなか自由に改変することはできません。


「あかつかテラス」は単なる飲食だけの提供の場ではなく「食の提供」「文化の創造を図る」ことを目的としています。

このエリアで「地域イベント」を開催することにより、民間のプレイヤーが動きやすくなり、集まりやすい環境が用意できるだろうと考えました。


楽しむだけでなく、「来る、集まる」理由を明確にすることで人が集まります。


また、今まで赤塚山公園に来たことがない人にとっても来るキッカケとなり、滞在時間もながくなります。

赤塚山公園にできた「あかつかテラス(アウトドアキッチンのある半外空間)」画像:イトコーHPより 
あかつかテラス木部:三河材+ウッドロングエコ塗装

百)

着工前の写真と比較すると一目両全ですね、「あかつかテラス」を囲む芝生もピースな感じです♪

田中)
元々公園のもっている素晴らしいコンテンツに、少し不足していた「ピースとしての場(調和がとれた和やかな場)を」を創出しています。

百)
「あかつかテラス」は、飲食の場を提供するハード面だけでなく、このエリア全体をつなげる、大きく言えば地域の人をゆるやかにつなげるソフト面の役割があるのか~。

伊藤博昭 代表取締役)
「居心地の良い場づくり」や「人が集まりやすい場づくり」をすることで、園内の人気3大スポットへいくまでの人の流れも良い意味で自由度が増しました。

百)
着工前と完成後の写真を比べると、「ぎょぎょランド」を目的とした路から「公園空間全体を愉しむ」路に変わったようにみえます。

自然になじむ
「三河材+ウッドロングエコ塗装」

建物外部や軒天、テーブルなどの色や素材は自然になじむものを選び、木部は三河材 、木部塗装:ウッドロングエコを塗装

百)
外観だけでなく、軒天もテーブルも椅子も地域材なんですね~。

田中)
サスティナブルな日常が求められる中、自然や地域の人を主役にしたこの「場」は、触れるもの(テーブルや椅子)に地域材をつかい五感で愉しめるようになっています。半外空間にすることで、テーブルから山脈やまちなみなど自然景観を見渡せます。

伊藤博昭 代表取締役)
地域材をつかうことで、循環型社会の形成に寄与できます。一般に公園事業ではメンテナンスが楽な建材を選ぶことが多いですが、自然との相性をみると違和感があります。やはり自然素材でつくられたものは身体になじみやすく、昔からあった建物にように感じますから。

Park-PFIは、公共の視点だけでモノをつくらないことも目的の一つです。長年にわたり、自然素材の家を手掛けてきたイトコーだからこそ、メンテナンスも含め、公園に自然素材や地域材を取り入れたいと考えました。

ヒト・コト・モノでつながる「場づくり」を創造する

田中)
「GOOD-TIME PLACE」は、自然と笑顔になる「場」が楽しい時間をつくりあげます。「あかつかテラス」の大きな特徴は、「プレイスメーキング(直訳:居場所づくり)」です。これは、イトコーが長年にわたり取り組んできた得意分野です。

このような事業は
・地域でお金をまわす
・地域の産業を盛り上げる
ことが大切です。

「食・自然」を中心とした賑わいをつくるにはイベント実施が不可欠です。しかし、開催するたびに渋滞などご迷惑をかけることも予想されます。

公園施設や近隣住民の方々にご理解をいただき、力をお借りすることも考えて「地域協議会」をつくり、地域の方々と連携し、活動にも参加し、「居心地が良く歩きたくなる公園、 ウォーカブルな公園!」を目指しています。

賑わいの創出
地域コミュニティー強化の一例
親しい人に「花と絵本」を贈ることをテーマにしたマルシェ
「サンジョルディ~大好きなあの人に本とお花を贈ろう」

画像・文 Instagram@akatsukayamakouenngoodtimeplaceの投稿より
「千両宝辺のサンジョルディ~大好きなあの人に本とお花を贈ろう~」「絵本と花」をテーマにしたマルシェの開催など、公園で遊ぶことを目的とし、マルシェで出逢った「絵本」を芝生で読むといった公園ならではのイベントを企画。イトコーが地域のお花屋さん「花坊」さんに相談にいき実現した企画。

スタートアップ支援、
産業創出の一例

伊藤博昭 代表取締役)
ほんの一例ではありますが、「あかつかテラス」では、社会人インターン生がcafeを運営する「weekendcoffeestand」という企画を導入しています。豊川市のこだわり珈琲店「specialtycoffee蒼」のオーナーと連携して実施しています。スタートアップ支援の「場」としても機能しています。

画像:Instagram akatsukayamakouenngoodtimeplace 「specialtycoffee蒼」 写真右:三河材+ウッドロングエコ塗装

画像:Instagram akatsukayamakouenngoodtimeplace「あかつかテラス」だけで楽しめる店舗をもたない店同士のコラボ店。モクテルを提供する「Am」×ハンドドリップ珈琲「喫茶ツキカゲ」

画像左:Instagram akatsukayamakouenngoodtimeplace 管理栄養士と、お米コンクール国際大会審査員の3代目米屋店主が厳選した「減農薬の地元愛知県産ミルキークイーン米」を使用した酵素玄米「おむすび権」

伊藤博昭 代表取締役)
イトコーでは、暮らしを愉しんでもらうのに、人(ヒト)・事柄(コト)・地域(モノ)のつながりを大切にしています。そのつながりを意識してWEBや冊子にしたものが、東三河エリアに住む人たちのライフスタイルを応援する「ヒト・コト・モノ」です。

地域工務店は、長い時間をかけて地域の人とのつながりを大切に育むことにより、いろいろなご相談や仕事を受ける機会に恵まれます。

百)「人とのつながりを大切に育むことでお仕事のご縁に恵まれる」ですね。大切なことを教えていただきありがとうございました。このような事業にウッドロングエコを選んでいただき光栄です。長い時間にわたりお話を聞かせていただきありがとうございました。」


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いや~メチャ勉強になりました。「SDGsやサスティナブルという言葉が市民権を得る時代になったが、地域工務店は何代も前からSDGsにあてはまる事業に取り組んできたんじゃないか」と思うことがよくあります。特に地域材をふんだんにつかわれる工務店さんや設計さんのお話は時代の先端をいっています。


小川社では「地域材×ウッドロングエコ」を軸としたインタビュー冊子『ウッドロングエコと人』を制作しています。第二号のテーマは「地域材×ここちe」です。8月頃に発刊する予定ですので、よかったらご一読ください。「未来はきっとe」(小川百合子)

【インタビュー】(株)イトコー
愛知県豊川市を拠点とする地域工務店。「自然素材」「自然エネルギー」「地域の暮らしを豊かにする」をモットーに一般住宅をはじめ工場や店舗などの「企画・設計・施工まで」をおこなう。「ヒト・コト・モノ」をつなげるコミュニティ形成を通して、家づくりを通してまちづくりまで行う事業所。

【聞き手・文】(有)小川耕太郎∞百合子社 小川百合子 

小川耕太郎∞百合子社 代表取締役。 主な仕事は持続可能な商品の一般化のためのPR。 1998年、山一證券が倒産した年に、夫婦で起業。地域の生物資源と産業(技)と自然が循環できることをコンセプトとした持続可能な商品づくりを目指す。



[連載BLOG]

【ウッドロングエコと人 /(株)イトコー】

1話 見る庭から 暮らしを愉しむ庭へ GOOD-TIME-PLACE

【ウッドロングエコと人 /(株)イトコー】

2話 「白鳥さんち」でスワッグのワークショップ

【ウッドロングエコと人 / イトコー】
3話 GOOD-TIME PLACEのコンセプトを公園事業へ

【ウッドロングエコ×地域材】をコンセプトとした、インタビューBLOG「ウッドロングエコと人」の続きはこちらからご覧ください。

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