2024.01.30

第二話 家具製作で培った技と発想でつくる

2022年より、三重県いなべ市にて新拠点を構えた「絵本と子ども道具kiwi」は、コミュニティービルドで店(小屋)を建てた。おとぎの国から飛び出てきたような素敵な店だ。

画像:絵本と子ども道具kiwi Facebookより

店主のイメージする店を聞き出す作業

kiwiの店主 田端佳織さんから、この店づくりに「げんげのはらっぱ」の野田さんが関わっていたことを聞き、妙に納得した。なぜならkiwiの小屋は、カーブを描く楕円型の建物と四角い建物がくっついた形で、円形の外壁の壁を張るのは、かなり大変な作業だからだ。現に、知り合いの大工さんに相談したとところ「どうやって建てるんだろうね」といわれたそうだ。一般木造建築の発想では、やりたがらない構造だと思う。

画像:絵本と子ども道具kiwi Facebookより

kiwiの店主 田端佳織さんがイメージする店の外観は、「魔女がでてくるような小屋」とか「シダーシェイクの外壁」等がでてきた。野田さんは佳織さんの頭の中にあるものを聞き出し、イメージをスケッチを描き(写真上)、「こんな感じかな?」と聞きながら、大まかなイメージを把握した。施工面での問題点は、円形の外壁の部分だったようだが、「正円でなく、楕円の壁ならできる!」と判断をした。

—–例えば、楕円型の木壁を作る段取りを考える場合は家具づくりの視点、構造の場合は小屋づくりや建物づくりの視点などわけて考えるのでしょうか?

野田「うーん、、、どちらかというと同時に考えていることが多いように思う」

多分、野田さんは、難しい問題に対してすぐに「無理」と諦めず、どうやったらできるのか?と考える人だと思う。家具づくりの視点と小屋づくりの視点が混在し、作業の道筋を立てているようだ。kiwiの場合は、店主である田端佳織さんの店への想いやディティールを尊重しつつ、現実の建物として再現できるように、まずは図面を起こし、1/20骨組み模型を作った。

画像元:野田哲生インスタグラムより 画像左:イメージスケッチを元に図面をひく 画像右:図面をもとに1/20の立体模型をつくる

画像元:絵本とこども道具kiwi Facebookより kiwi店主の夫 昇さんと打ち合わせ

野田 こうやって店と人の1/20の模型をつくることで、建物のバランスや屋根の勾配はこんなもんでいいのか?梁桁などの構造材や筋交いなどの補強材配置をどうするか?開口部や天井の幅、高さはこれでいいか?などがわかってすごくいいんです。実際に模型を作ることでわかることは多いです。だって丸いのと四角いのがひっついた複雑な構造なんですもん(・_・)

画像元:絵本と子どもの道具kiwi Facebookより / 画像左:構造材  画像右:野田さんの刻み作業

家具製作に多い「曲木加工」で小屋の外壁をつくる

木材の曲木加工や曲線加工は、家具製作に多い加工だ。野田さんは、楕円型の外壁を打つために、胴縁は、厚さ9mmの板を三枚に重ね、カーブをとった。胴縁に厚みがあると、木の板が曲がらないからだ。胴縁さえキチンと打てれば、「シダーシェイク張り」という小さな板を重ねて打つ張り方なので、イメージスケッチに近い壁ができるそうだ。

 

画像元:絵本と子どもの道具kiwi Facebookより / 画像左:楕円型の外壁の胴縁  画像右:楕円型の外壁の胴縁をすべて打ち終える

写真:絵本とこども道具kiwi  Instagramより 屋根の構造部分

あえてムラっぽく塗り「おとぎの国らしさ」をだす

シダーシェイク壁には、ウッドロングエコと鉄媒染液をつかい、あえてムラっぽく塗装をした。ムラっぽく塗ることで、おとぎの国のような印象をつくっている。

画像元:絵本とこども道具kiwi Instagramより シダーシェイク張りの板は、わざとムラがでるようにウッドロングエコと鉄媒染液を使い分け自然なグラデーションをつける

げんげのはらっぱが製作する小屋の木部に塗装はウッドロングエコを使用

ウッドロングエコは、北欧の木こりのファミリーが口頭伝承をもとにつくった木材防護保持剤だ。国立公園の管理者 など、環境に負荷をかけない木材塗装に関心を持つ人から依頼があり、多くの人の力を借りて、今のような粉末の形状に辿り着いた商品だ。野田さんのつくる小屋にも使って頂いている。

ニュージーランドに生息するkiwiのスツール

野田さんは、kiwiの開店祝いに、ニュージーランドに生息する「kiwi(キーウィ)」のスツールを製作した。この椅子に座り絵本を読む子ども達の姿が目に浮かび、みているこっちまで幸せな気持ちになる。

画像元:絵本とこども道具kiwi Instagramより 画像左:kiwi看板 画像右:ニュージーランドに生息するkiwiのスツールを製作

kiwiの屋根裏部屋には子どもの読書室のような空間がある。この空間にスツールを置いたところ、kiwiのお客様からスツールの注文をいただいたそうだ。それをキッカケに野田さんは蛙のスツールも製作し、kiwiの屋根裏部屋には2つの可愛らしいスツールがおいてあるという。

写真:絵本とこども道具kiwi Instagramより

それをキッカケに野田さんは蛙のスツールも製作し、kiwiの屋根裏部屋には2つの可愛らしいスツールがおいてあるという。

乳児の玩具から生活道具、そして小屋までつくる野田さん。大学時代には人文地理学を学んでいたという。どういう経緯で木工職人へとたどり着いたのか、野田さんの原点みたいなものが見えるかも知れない!と思いインタビューを続けた。(つづく 3話へ

インタビュー 野田哲生(のだ・てつお)

1968年、三重県伊勢市生まれ。法政大学文学部地理学科卒業後、岐阜県立高山高等技能専門校木工工芸科にて家具製作を学ぶ。後に長野で田舎暮らしをはじめながら、長野県伊那技術専門校建築科にて家の建築を学ぶ、2008年より菰野町にて「手作り生活 おすそわけ工房 げんげのはらっぱ」を構える。

文・取材・一部写真 小川百合子
小川耕太郎∞百合子社 代表取締役。 主な仕事は持続可能な商品の一般化のためのPR。 地域の生物資源と産業と自然が循環できることをコンセプトとした持続可能な商品づくりを目指す。

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