2014.09.07
リフォーム産業新聞 2007年4月10日付 No.776●しぜんな自然派家造り第8回ヒノキフローリングに特化した製材工場編(執筆)
「リフォーム産業新聞」に、小川耕太郎が親しくしている自然派の家造りを手がける工務店やメーカーを取材し執筆した『しぜんな自然派家造り』を2006年9月から月一回にわたり10回連載。リフォーム産業新聞 2007年4月10日付 No.776
●しぜんな自然派家造り第8回ヒノキフローリングに特化した製材工場編
大量のヒノキと土地を一度に購入
静岡に加藤木材産業という製材工場がある。数年前までは通し柱や母屋角を中心とする製材工場であったが、今ではヒノキフローリングの製造に特化し、フレビオ(一般のヒノキフローリング)とムク暖・皇樹KOUKI(床暖対応フローリング)という商品名で業績を伸ばしている。
社長の加藤力也さんとはフローリング製造に進出しようという時に塗料のお問合せを頂いた事がキッカケで知り合ったのだが、その徹底ぶりのすさまじさにいつもびっくりさせられている。いきなり最新鋭の機械を導入し、材の仕入れは木曽ヒノキのみ(最初は杉も少量生産していたが)、塗装は蜜ロウワックス以外使いませんと決めてしまった。木曽ヒノキをびっくりするほど購入し、材を乾燥させる場所がないと土地まで買った。後で聞くと決定までにはいろいろな調査を気が済むまでやったそうだが、横で見ていた私はいきなりそんなに投資そて大丈夫なのかと心配したものだった。
実際、フローリングに進出して数ヶ月は売上げが上らず、会長のお父さんから「小川さん何とかフローリングを売ってやってくれ。このままでは倒産してしまう。」と言われ、蜜ロウワックスを採用してもらっているので心配していたが、その数ヶ月後には会長がフォークリフトに乗って忙しそうに材を運んでいる。「会長、お忙しそうですね。」と声をかけると、「材木屋なんて、こんな年になっても働かされる。」とぶつぶつ文句を言っている。この間まで「暇で暇でしょうがない。」と怒っていたくせに、まったく困ったものである。
なぜ、こんなに急激に伸びるのだろうか?ヒノキのフローリングなんて安い商品があふれるほどある中、決して安くはないフローリングがどんどん売れて行く。マンション一棟まるごとフレビオ仕上げ、銀座のクラブが採用、建売住宅にフレビオを採用したら周りの建売より1000万円高で建築途中に完売などビックリの話がいっぱい出てくる。
別に難しいことではない。先ほどお話した徹底が信頼に繋がっているのだ。当初、ウレタン塗装にしてくれたらいくらでも買うという話があった。もしそこでウレタン塗装を受けていたら、価格競争の波にドップリつかってしまい、こだわりのフローリングとしては売れなくなっただろう。あくまでも蜜ロウワックス、木曽ヒノキにこだわり抜いたことで巷に溢れているヒノキフローリングとは別のブランド品として認知されたのだ。
床暖房対応フローリングも徹底が産んだ商品である。無垢の一枚板フローリングで床暖に対応するなんて、木材のことを知っている人間なら即座にムリと思うのが普通である。しかし、加藤社長は独自の乾燥方法を開発し、2年がかりで東京ガスの床暖房テストに合格する。80度の温水を床下に1100時間流し続け、毎日コップの水をフローリングに振りかける。10ヶ所の測定で1ヶ所でも0.5mm以上の隙間が出来たら不合格になるという過酷なテスト通過したのである。
皇樹KOUKIには床暖房にしたいお客様にも無垢の国産材を使ってほしいという加藤社長の意地ともいえるこだわりが詰まっているのだ。合格するまで工夫すると最初から決めてしまう。迷わない、ぶれない、一番難しいのはここだけなのだ。
決めたことに迷い、途中であきらめ、投げ出してしまったところに人とは違う差別化された商品など生まれるはずがない。最後までやり抜いたところにブランドは産まれる、ただそれだけのことである。