2014.09.07
リフォーム産業新聞 2006年9月12日付 No.747/第1回有機無農薬野菜の八百屋編(執筆)
「リフォーム産業新聞」に、小川耕太郎が親しくしている自然派の家造りを手がける工務店やメーカーを取材し執筆した『しぜんな自然派家造り』を2006年9月から月一回にわたり10回連載。「しぜんな自然派家造り」[第1回]有機無農薬野菜の八百屋編–八百屋の店先で防蟻剤を販売–
地球環境にやさしい、と銘打っている企業は星の数程ある。しかし実態はいかがなものか。初回としては風変わりではあるが、エコロジー雑貨販売店を紹介する。富士村夫妻が経営する有限会社生活アートクラブである。
同社が創業時に開発したのは河川の負荷軽減を目的としたリサイクル石鹸。これを販売していくうちに、実は、川を汚す大きな要因とされる農薬問題にぶつかる。農作物に使用する農薬のなんと数百倍の量が殺虫剤やシロアリ駆除剤に使用されていることを知り、突如自然素材によるにシロアリ駆除業に進出をする。
一般に、シロアリ駆除剤メーカーの販売先は工務店、ホームセンターだ。ところが同社は真逆の発想で、都内の小さな八百屋から営業をスタートした。八百屋と言っても、有機無農薬野菜を扱っている自然食品店のような小売店。当初、八百屋の主人からは、「野菜を売っている横でシロアリ駆除なんて、お客様に対してイメージが悪すぎる」と叱られたそうだ。しかしながら、「そこは無農薬野菜も自然素材のシロアリ駆除も健全で肥沃な土壌をつくる同じ仲間」と説得し、なんとか了解を取り付けた。
晴れて「薬剤を使用しないシロアリ予防・駆除」と銘打ち、店の片隅に遠慮がちに立てたポールに幟を括ったのである。その2日後、お店の常連客から「こういう商品を扱って欲しかった」と絶賛の声付きでシロアリ駆除の注文を貰った。
住宅の専門ではない会社にも関わらず、健康・安心・安全といった間口で呼びかけを行った結果、初年度180棟、2年目には200棟を超える施工請負に恵まれた。
昨年は、リフォーム詐欺事件が勃発。シロアリ業界や訪問販売業者への不信感が広がる中、同社では消費者の信頼を勝ち取り、新たなサービスも開始した。エアコンやレンジ周りの清掃仕事だ。家族の健康まで配慮した丁寧な床下の工事に対するお客様の信頼があるからこそ、次なる相談事が寄せられたのかもしれない。床下から床の上に上がれるチャンス。早速会社趣旨に合致した「塩素系薬剤を使用しない、人と環境にやさしいハウスクリーニング」のネットワーク化を1年がかりで構築した。シロアリ業に比して、ハウスクリーニング業は更に面白いらしい。特にエアコン、浴槽の清掃にはパフォーマンス性がある。実際、消費者から次なる要望や相談事が舞い込んでくる。屋根の修繕、フローリング張替、今話題のオール電化住宅など、リフォーム相談・依頼である。現在、施工業者のネットワーク化を図っているそうだ。
同社の当面の目標は、国産材を育てること。安全をテーマにシロアリ駆除やハウスクリーニング事業がお客様との良きコミュニケーションツールツールとなって、将来、国産材を使用した住宅関連事業に進出するのは、それほど遠い話ではないかもしれない。
文:小川耕太郎∞百合子社 小川耕太郎