「林業の仕事は、いい仕事をしたかどうかの結果が出るのは俺たちが死んだ後だ(親方)」–映画WOOD JOB!神去なあなあ日常を見た–

yama_woodjob_bana.jpgいま話題のロードショウ「WOOD JOB!–神去なあなあ日常–」を見た。
大学受験に失敗し、ごくごく不純な動機で林業の世界に飛び込んだ都会のヘナチョコ主人公、平野勇気(染谷将太)が、1年間でちょびっと山の男に成長する姿を描いた青春モノという紹介でいいのかな。
yama_wood_miura.jpg
原作は直木賞作家の三浦しをん、監督は「ウォーターボーイズ」「スウィングガールズ」の矢口史靖、三重県の山村、山中でのオールロケ、村民は完璧に地元の言葉、CGなし、スタントの吹き替えなし、プロの林業家も「泣いた」というフレーズも目にしたから、「そんじゃ泣かせてもらいましょか-」と結構期待した。
因みに、なあなあというのは原作の三浦しをんの造語で、「のんびりいこう」とか「まぁ落ち着け」みたいな意。平日のレイトショーだったけど、観客はボクも含めてたったの3人。う-ん、まぁこれも、なあなあだねぇ。
で、林業に携わる自分でも100%リアルに楽しめたかというといやいや、「ないないない」と突っ込みどころはわりかしあった。町へ出るのに二時間ちょっとかかる、携帯は入らない、ウォシュレットもない、コンビニも当然ない過疎の村に長澤まさみや優香が住んでいる? みたいな突っ込みはなしにしても、主人公が降り立った無人駅の空き地があんなに散らかってるのはなんで? とか、春先のオス鹿があんな鳴き方する? とか、山の天気が変わりやすいからといってあの激変はアリ? とか、村人の年齢構成もなんだかいびつだし、マムシの見せかたもちょっとあざとい。女人禁制の神域を長澤まさみにバイクで走らす演出は必要?とか、それに山仕事の男の裸体はあんなに肉付きよくないよ、もっと削がれているというか枯れているというか・・・あんまりしゃべるとネタバレになるけど、あんなモンスターのご神木、あんなマトでは物理的に止まらんよ、でしょう?
でも、都会の人とか林業にまったくかかわりのない人にとっては(というかこちらのほうが大多数)とるに足らないことだろうし、せっかく林業に光をあててくれた映像の隅っこを、林業やってる人間がつついてどうするのということで、ここで方向転換、逆に「あ–あるあるある、わかってるねぇ–」もあげてみる。
轢死体の鹿肉が夜の食卓に上がるのは僕も体験済みだから「あり」、カッコウの鳴く見晴らしのいい尾根で飲むあのコーヒーは間違いなくイケる、あるあるだなぁ。原木市場のセリ子の声は本物。田舎の子供たちが意外に生意気で憎たらしいところとか家の戸締り一切なしとか村内放送とかこれもありだなぁ。そういえば、主人公が腰に下げたナタ入れがボクのと一緒でびっくりした。びっくりついでに親方の息子が座敷の柱に絡みついて回ってるのって、あれってすごくない?  
体験したことないけど、あ–そうなんだ、そうなんだろうなっていうのもあった。種取りで大杉の梢に登った二人が見渡す風景、フィルム撮影らしいけどあれはいいな、カメラはどうやって回してんだろう? 同じ三重県でもあちらはスギ土地(ドヂ)、尾鷲はヒノキ土地だし、気候も違うから下草とか樹木の様子がだいぶ違う。雪がとけ地面があらわれ草木がいっせいに芽吹くシーンには見とれた。105年生の杉を倒すシーンは、主人公のがスチール社のチェンソーで、教官役のヨキ(伊藤英明)のはハスクバーナーかな? カーンカーンってクサビを打ち込む音が山にこだまする、風がそよいで木がギィーってきしむ、一瞬の静寂のあとドゥッと轟音を残し木が倒れる……鳥のさえずりと虫の声。あの映像に付け足すなら、あたりに漂っているはずのチェンソーの排気臭と伐り口からの微かな匂い。
yama_wood_menjy.jpg
最後のスペクタルは、「ある」とか「ない」とか超えてる。そもそも普通だったらあんなシーン映像化しようなんて思いもしない。直径3mのヒノキなんて考えられない、よくあんなものを伐採できたな?。原作にはないストーリー展開もうまいなぁーってとこがいくつかあった。「さようなら–」と都会に戻った主人公、「すいません、すいません」のセリフきりで、あとは動作と笑顔だけでエンドロールまで語らせた、うまいよね。
「農業だったら食べた人が喜んでくれるかどうかですぐわかるけど、林業の仕事はいい仕事をしたかどうかの結果が出るのは俺たちが死んだ後だ」と親方が言う


林業家にとって、このセリフは「あり」。「あり」にして次の世代にバトンタッチしていきたいんだけど、実は林業がもう産業として崩壊しかけている現実に立ちすくんでしまっている。原作も映画もそのことには触れていない。触れてもらわなくてよかったけど。(文:木もちeーデッキ担当 竹村裕二)
■■竹村裕二(たけむら・ゆうじ)■■
  • 小川耕太郎とは大学時代の同級生。東京での会社勤務を経て、三重県尾鷲市で林業家となる。
  • 現在は小川耕太郎∞百合子社木もちeーデッキ担当
  • 尾鷲森林組合理事
  • 尾鷲緑の協会理事
  • 熊野古道語り部 等
yama_wood_takemura.jpg




wa.jpg