2023.05.19
MIMCRAFT、社名に込めた想い。
建物だけでなく家具や収納、建具なども一つ一つオーダーメイドで手間暇かけて設計をする「MIMCRAFT一級建築士事務所」(以下、ミムクラフト(略))は、宮崎県都城市に事務所を構える小さな設計事務所です。
House-TKのリビング 屋外木部(格子建具)+ウッドロングエコ塗装
Made in 宮崎&都城の家
~社名の由来~
『MIMCRAFT一級建築士事務所(以下、ミムクラフト(略))』の社名は、
Made inの「Mi」、
Miyazaki( 宮崎) Miyakonojo(みやこのじょう) Mimata(三股) Minami-kyusyu(南九州)の頭文字「M」と
Craft(手作り、技、技術)をかけあわせ、地元の材料や職人で宮崎の家づくりをしよう!と名付けたのだとか。
都城市と三股町は宮崎の南部に所在します。
地域の自然素材でつくる家
OPEN HOUSEにたずねてくるお客様の第一声は必ずといっていいほど「家の香りがちがう!」なのだそうです。ミムクラフトがつくる五感が喜ぶ家には、一見しただけではわからない、細やかな仕掛けがたくさんあります。空気の流れ、窓の取り方、自然素材でつくられた内装他 。まずは家につかわれる地域の自然素材から説明します。
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木材→宮崎産
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宮崎の杉は、多くの樹脂を含むため吸水性が低く、軽量で強度が高いことから造船用として盛んに利用されたことで有名です。現在は、宮崎杉の3大特徴(①ネバリが強い ②油脂分に富み腐れにくい ③白アリに強い)を活かし、家の構造や板や家具などに使用されます。
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内装の白壁→都城市産のシラス
高千穂シラス
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「家の空気がちがう!」理由のひとつに内装でつかわれる白壁があります。この白壁はシラス壁と呼ばれ、マグマが噴火と同時にひやされて火砕流となり堆積したものです。多孔質な高純度無機質セラミック物質であるシラス壁の特徴①消臭・殺菌 ②防カビ ③調湿により、室内空気環境が向上します。
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日東フローリング
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宮崎県都城市に拠点をおくフローリングメーカーです。その中でも桧床板、桧壁板の生産量日本一だとか。
プライベートテラスなのに外の雰囲気を感じる
「引き戸型格子建具」
ミムクラフトさんが設計する外観は、木製建具と中庭が特徴的です。写真上の外壁中央部分をみると・・・・引き戸型格子建具があります。
リビングから中庭や引き戸型格子建具をみると、このようにみえます。
植栽と白壁とウッドロングエコ塗装の建具が絶妙なバランスでお洒落!プライベート性を保ちながら、格子越しに外の雰囲気がわかります。ウッドロングエコ塗装の木と植栽と白壁の相性が爽やかで、植物が適度に木陰をつくります。
玄関は通り沿いにあり、プライバシーが守られ、シュッとした印象です。
シャッターをあけるとガレージがみえ、ガレージの奥へいくとリビングにつながります。
災害の経験から生まれた「引き戸型縦格子戸」
画像:ウェザーニュースより
代表である設計士 德留 学さんに「引き戸型縦格子戸」をとりいれるようになったキッカケを伺いました。
「確か、東日本大震災の数か月前だったかな。霧島山の新燃岳で本格的なマグマ噴火(2011年1月)が発生し、大量の火山灰が町に降り積もり、生活や農業に大きな影響がでました。火山灰の除去作業にあたり、中庭や庭に積もった重い灰を運ぶ通路が必要だ!と思いました」
その後、設計プランに取り入れたのが「引き戸型縦格子戸」です。
「引き戸にすることで、外に行き来する間口が広くとれます。また、戸ではなく格子にすることで通風がとれ、外とのゆるやかなつながりをもちつつ、程よくプライバシーを保てます。(德留 学代表)」
つくられた引き戸型縦格子戸は、「防災」から生まれた機能的で美しい木製建具です。社名『MIMCRAFT』のCRAFTという部分に込められた、住まいに対する哲学が表れているようにみえました。
「日本のひなた」宮崎県
宮崎県=春季のプロ野球を筆頭とするスポーツキャンプ場の開催地というイメージがありませんか?宮崎県の旧国名は日向国(ひゅうがのくに、ひむかのくに)。日向(ひゅうが)と書いて「ひなた」と呼ぶこともあり、平均気温(3位)・日照時間(3位)・快晴日数(2位)と全国トップクラスです。日照時間がながい地域だからこそ、ミムクラフトの設計には、適度に日差しが調整できるという特徴があるように思います。例えば
写真上(House-K)の玄関にはいり、引き戸型縦格子戸をひくと
中庭
この引戸型格子建具(上画像:オレンジの箇所)は、戸を引くと間口が開放され、災害時だけでなく大きな荷物の運搬にも役立ちます。
中庭の芝生、テラス、ウッドデッキ(ウッドロングエコ仕上げの宮崎産の杉デッキ)、リビングへと続く一体感は、シュッとしています。
「居心地のよさ」という言葉は、感覚的な表現に聞こえるかもしれませんが、実は空気の流れや日差し、植栽、導線などが綿密に計算されていることがよくわかります。
外壁素材で印象がかわる「アウトドアリビング」
ここ10年、「アウトドアリビング」を設ける人が多くなりました。
さらに、コロナ禍にはいったころから、「おうち時間を充実させたい」という人が増え、アウトドアリビングデザインの幅がひろがり、カジュアルからラグジュアリーまで多種多様な設計デザインが増えました。
フェンスや格子などの目隠しがあれば、外ならではの開放感が楽しめます。夏にはプールを出して水遊びができたり、梅干しなど保存食をつくったり、ビールをのんだり、愛犬や愛猫のグルーミングの場となったり、多目的な場として活用できるのが、アウトドアリビングの良さです。
また、アウトドアリビングにつながる窓を大開口にすることで、リビングからお子さまが遊んでいる様子を見守ることができるので、子育て世代だけでなく、お孫さんをあずかるシニア世代にも人気です。
何もない自由なアウトドアリビングを確保することで、暮らしの愉しみ方は大幅に広がります。
コロナ禍に入り、おうち時間が長くなった時期に、施主様から「家でゆったり過ごす時間がふえて、家を建てて本当によかった」といったうれしい感想をいただいたそうです。
省エネ効果も期待される「アウトドアリビング」
「リクルート住まい研究所の調査(現:SUUMOリサーチセンター)」の調査(2015年)では、若い世代ほど「家は家族の思い出を刻むものだ」という意識が強くなっています。室内と異なりアウトドアリビングではテレビなどもなく、会話や食事などを楽しむ場として人気が高まっています。
昔から、日本では軒下に「縁側」がもうけられ、四季の移ろいを楽しむコミュニティースペースとして、現代でいうアウトドアリビングのような空間が存在していました。
今、この「アウトドアリビング」を設置することにより、温室効果ガス削減にも貢献するとして注目されています。なぜなら、外で過ごす時間が増えることでエアコンの使用が減少し、省エネに役立つという見方があるからです。
オーストラリアクイーンズランド州政府の調査では、一軒あたり年間で日本円にすると8,500円から19,000円の節約になり温室効果ガス削減量は、州全体で年間94万tから210万tにもなったという報告もあります。(資料:2009年朝日新聞より)
屋外に無垢材+ウッドロングエコ塗装の材をつかう2大メリット
ウッドロングエコ塗装をした木は、塗膜をつくらないため、木そのものがもつ2大メリット(①熱伝導率が低い ②紫外線が吸収される)がそのまま生かされます。
真夏に木の外壁やデッキをさわっても熱くない
紫外線を吸収するため、
目にやさしい
紫外線の波長は最大で400ナノメートルです。上のグラフをみると木材の外壁やデッキなどは紫外線による反射が少ないことがわかります。2つのグラフにより、無垢材をつかうことで、肌や目などにも「心地よい」と感じることが感じるがご理解いただけたでしょうか。
ミムクラフトは、地元の自然素材を使い、地元の職人と協力して家づくりをおこなうことで、
・自然
・技
・経済
・雇用
をぐるぐると循環され、社名に託した思いを確実に実現させています。「住まい」をとおして、持続的に宮崎の自然環境や地域の雇用を守る取り組みに、これからも目が離せません。(つづく)
インタビュー
MIMCRAFT一級建築士事務所
文:小川百合子 小川耕太郎∞百合子社 代表取締役。 主な仕事は持続可能な商品の一般化のためのPR。 地域の生物資源と産業と自然が循環できることをコンセプトとした持続可能な商品づくりを目指す。
【ウッドロングエコ×地域材】をコンセプトとした、インタビューBLOG「ウッドロングエコと人」の続きはこちらからご覧ください。
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