2013.09.30

2013年9月 ろうきん森の学校だよりvol.30–森・人・地域を育てる10年間のプロジェクト—

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ろうきん森の学校だよりvol.30(2013年9月)–森・人・地域を育てる10年間のプロジェクト—[
連載]森羅万象の中で小川耕太郎∞百合子社のインタビューが掲載されました。



—-以下転載—-


蜜ロウと国産杉で山林循環へ

インタビュー:有限会社小川耕太郎∞百合子社 小川耕太郎
聞き手:田中啓介(全国事務局)

[Q1]どういう経緯で会社を起こされたのですか

家業の製材所が金融危機の煽りで倒産したことがきっかけです。同様に周りの製材業も廃業していくのを目の当たりにしました。質の良い材木を扱っていたのに、それが消費者に伝わっていない。自然を活かした産業がこのまま衰退してしまうと、未来はどうなってしまうのか、強烈な危機感でした。自然を守り活かしながら育む。そのために会社を起こしました。


[Q2]創業当初から、蜜ロウワックスを扱っていらっしゃたのでしょうか。

いえ、一番最初は備長炭の販売からのスタートでした。さらに、木酢液やお茶・お醤油・ハチミツ・干物といった、食品関係を扱っていました。ちょうどその頃、関わっていたヒノキのフローリング協同組合が、ドイツ製の自然塗料の使用していたんです。ただ100%自然素材ではなかった。何種類からの塗油と何種類からの塗料ロウ成分を混ぜて均質化させるために、乾燥剤や有機溶剤が含まれていたんです。じゃあ、自分たちの手で、完全に自然素材だけの塗料を作ってみようと思い、地元の養蜂家に相談して蜜ロウを使うことになりました。また、祖父が提灯や番傘をつくる際に和紙の強度を高めるために使っていたエゴマが最適ということが分かり、蜜ロウとエゴマという2つの自然素材だけでつくられた「未晒し蜜ロウワックス」を誕生させることができました。時代背景として、シックハウスや化学物質過敏症などが話題になっていましたので、全国のお客様からご注文を頂き、会社が大きくなる契期となりました。


[Q3]もう一つの代表商品である「木もちe-デッキ」についても教えて下さい

2002年からカナダの「ウッドロング・エコ」という、天然成分だけでつくられた屋外用の木材防護保持剤を扱っています。環境やカラダに安全であるばかりか、塗り直しメンテナンスが不要なことから、皆さんがもっと気軽に国産材を利用するきかっけになればと考えています。ただ、特に都会なんかでは、こうした屋外塗料を塗って乾かすのに十分なスペースがないというお声を沢山いただいていました。私たちの願いは、国産材をもっと使ってほしいということ。ならば、国産材を直接使う商品を開発しようと、誕生したのが「木もちeーデッキ」です。心地よい肌触りの杉材を用いたウッドデッキ材で、水質汚染や土壌汚染がなくて最終的に土に還り、小さなスペースでも施工が可能なことから、多くの一般家庭で導入していただいています。国産杉を使うことで山が元気になり、かつ加工がカンタンな杉を使うことで「修繕しながら長もちさせる」意識がもっと広がってくれればと思います。


[Q4]小川さんが掲げていらっしゃる「21世紀型山林循環経済活動」の普及に、一番の課題はなんでしょうか。

現在、間伐をもっと促進させようと補助金が多く出ています。でも補助金によって間伐材の価格が安くなってしまうと、市場に引っ張られるカタチで結果的に主伐材の価格も下落してしまい、林業がますます衰退してしまいます。今の日本でもっとも大切なことは、国産の主伐材がきちんと循環する仕組みを作ることで、主伐材がしっかり流通に乗ってくると、自ずと手入れを行うことから間伐材が促進されるはずなんです。林業行政には、このあたりも考えて頂きたいですね。


[Q5]森の学校だより」の読者の皆さんにメッセージをお願いします

例えば、ウレタン塗装されたフローリングと、無垢材に蜜ロウワックスを塗られたフローリングを、実際に触って比べてください。肌で触れたら、その心地よさがどれだけ違うかをハッキリと分かるはずです。現代は木に触れる機会そのものがどんどん減っていますが、触れたら誰でも気づきます。「ろうきん森の学校」さんも、そうした実際に触る体験を提供されていらっしゃいますが、私たちももっともっと、直接木に触れる機会を創り出していきたいと思います。

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