2016.01.28

「檜皮葺き(ひわだぶき)」

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「檜皮葺き(ひわだぶき)」



地元の製材所に、丸太からカットした檜皮(=ヒノキの樹皮)が積んであった。高野山の寺屋根の葺き替え用らしい。本来なら原皮師(もとかわし)という職人が立ち木によじ登り樹皮を剥ぐのだが、危険かつ重労働でもう全国でも数えるほどしかいないという。



檜皮葺きは、出雲大社、厳島神社、上賀茂神社、下鴨神社、日吉大社、住吉大社、北野天満宮、清水寺、銀閣寺、善光寺、室生寺五重塔、高野山金剛峰寺・・・と、数多くの寺社仏閣の屋根で葺かれ、国宝、重要文化財の建造物だけでも730件程あるという。檜皮葺きは屋根に優美な曲線や形状を与え、軽快さも重厚感も表せる、世界に類を見ない日本固有の伝統工法だ。

檜皮葺きの作業工程は、
(1)檜皮の剥ぎ取り檜の樹皮を薄く切り揃える
(2)数枚綴りに整形

(3)整形後の檜皮の葺き上げ

とあり、それぞれ「原皮師」、「檜皮拵え師」、「檜皮葺き師」の専門職が担う。どの作業も緻密さが求められ、例えば屋根葺きでは、75cm長の皮を1.2cmずつ上にずらしながら62.5枚重ね、5枚重ねる毎に竹釘で留めるが、一坪(3.3平米)当たり竹釘を2400から3000本使用するという。平安時代に確立したこの工法は、技術的にほとんど修正の余地がなく、葺き師独自の解釈やアイデアを加えるのも厳禁なのだという。

檜皮葺きは、材料費+工賃で坪単価約50万。銅板葺きや瓦葺きの5から10倍のコスト、対して寿命はそれらの3分の1でしかない。檜皮葺きが金喰いという一面は否めないが、千二百年守られてきた檜皮葺き文化を未来へ託すのかどうか、現代の価値観では計ってほしくない。
(竹村)

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