2015.12.18

苦境の林業

ringyou.jpg9月24日の弊社フェイスブックに竹村君が以下の文章を投稿していた。

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「苦境の林業」

先日の地元紙にこういう記事が載っていた。
「尾鷲市は本年度の伐採林の一部1.6ha(58年生、ヒノキ、杉計1,459本)を最低制限価格25万円で入札する。これは立木価格を454万円と算定、伐採、搬出費用402万円及び必要経費を引いて、立木売却額を25万円と試算したため」と。つまり58年育てたヒノキ、杉を1本単価171円で売却するというわけ。



尾鷲市は4年前から、市有林の林齢平準化と尾鷲林業活性化の目的で、60年生前後の市有林を伐採しているが、去年は自前で伐採、搬出し、原木市場でセリ売りしたところ数百万の赤字がでたので、立木売りも試験することになったようだ。25万円だったらお買い得だろうと市内の業者に聞くと、「ヒノキの単価の落込みがひどうてな、タダで貰っても採算合わすかどうか」という返事だった。



個人山であれば植林、下刈り、枝打ち、間伐と58年間手塩にかければ、1.6haで400万位の経費はかかる。伐ったら植えるルールに沿うなら、次の植林代も60万位は見ないといけない。収支計算では、過去に掛った経費は親や祖父の代だから目をつぶったフリをしても、売却収入25万円では植林費用と所得税だけで当然マイナス。それで山は58年生の伐木山から、手のかかる植林したての苗山に若返って、「オレいったい何やってんだ?」みたいな話になる。



戦後70年で、これほど林業不況の際立った年はないのでは? 林業が生業(なりわい)ですとはもういえない。徳俵に足が掛ったのはずっと前からだけど、その時期も過ぎたのかも。(竹村)
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この私有林の入札があったが、入札参加者無し。
つまり、1,459本の立木を、たった25万円なのに、買おうという業者が現れなかったという事だ。


伐採した丸太を尾鷲木材市場で売却しなければならないという条件も入札業者がいなかった大きな要因であったが、
それにしても、58年育てた杉・桧(9割はヒノキ)が、1本171円にもならないというのは衝撃だ。


林業という業種は、完全に成り立たないことがはっきりしたと言えよう。


とすると、林業家は伐採搬出業者、製材業者、材木屋、建築業者、木工業者などとコラボして、
あるいは、それらの事業を自ら立ち上げて、それとも、それ以外の方法で何とかしなければ、終わりという事だ。


だけど、まずもって必要な、育林・伐採・搬出をできる人間がほとんどいなくなってしまった。
日本中、どの地域も似たり寄ったりだ。


今後、一度無くしたものをゼロから再建する事になる。
思ってもいなかったほどの莫大な費用が掛かるだろう。
災害が増え、復旧などの費用は、国の大きな負担となってくるだろう。


何年か前、高速道路が通るという事で、土方の業者が、トンネルが通るところの木を伐採する見積もりを作った。
自分たちで切ったらおおよそ30万円程度の費用がかかるだろうという事になり、
私の弟に「それより少し安い金額で切ってくれ。」と言ってきた。(弟は山仕事をしている。)


「休みの日に切るよ。」と金額を決め、たった2日で全部切ってしまった。
土方の業者は慌てて金額を安くしてくれと言ってきたらしいが、弟は突っぱねた。
そりゃそうだろう。まだ暗いうちに山に入り、日が暮れるまで切っていたらしい。
それに、土方の業者には、国から30万円の見積もり通りのお金が入るのだ。

林業のプロと土方の人間ではそれだけの差が出るのだ。


これから国は、林業家は、木材に関連する人たちはどうするつもりだろう。
どうするよ小川耕太郎∞百合子社。

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