キイチゴ と 熊

ichigo1.jpg『『キイチゴ』

キイチゴは国内で約40種あるが、

毒をもつ種類はないので安心して口にできる。

ただしバラ科で茎にトゲのあるものも多く、

摘み採るのは少しやっかいかも。

写真のモミジイチゴ(ナガバモミジイチゴ)は

濃い甘みとほのかな酸味で

文句なしに美味。

ライバルのサルを差置いてゲットしたときは、

こっちがウキキキィーとはしゃぎたくなる。

でも、キイチゴが鳥や獣に実を捧げるのは、

野山での種子散布を

期待してのことだから、

「お前には食われたくないわー」といわれているかもしれない。

キイチゴはツキノワグマも大好物で、

大きな体を折り曲げ

キイチゴの木を傷つけないよう、

一粒ずつ、やさしく食いちぎるらしい。

クリやクルミの枝は

ボキボキやりたい放題に折るのに

不思議なことだ。

クマは傷付けてはいけない木と

そうでもない木を

分別するのだろうか。

捕食や危険回避など、生きるすべを

子グマに授け尽した母グマは、

二度目の初夏を迎えるころ、

子グマをキイチゴの群生地へと導く。

そして子グマが夢中で

キイチゴをむさぼるのを見届けると、

そっと姿を消してしまう。

我にかえった子グマが

どんなに泣きわめこうが

母グマは二度と現れず、

やがて子グマは独りぼっちで

生きていくことを悟るのだ。

この熊の母子の別離を、

マタギは「イチゴ落とし」とか「イチゴっ放し」と

呼ぶそうだ。

小川耕太郎∞百合子社 & 熊野古道語り部 竹村