2014.08.13

奉書の原料「那須楮」農家の現状を知る。途絶えてしまうかもしれないものを売る意義—2014年8月7日インターン生 EDJONA ISMAILI日報より—

20140807_todaeru.jpg–2014年8月7日インターン生 EDJONA ISMAILI日報より—


【–2014年8月7日スケジュール】

8:00-8:15 掃除

8:15-8:30 打ち合わせ

8:30-11:00 昨日分の日報のまとめ

11:00-12:00 藤井さんへ報告

12:00-13:00 昼食

13:00-17:00 原さんからなす楮の現状を聞く・報告会・これからの予定

 

【学んだ事・気づいた事】

1:2014年8月7日分の日報のまとめる。

昨日は偏頭痛でダウンしてしまったため何もできなかったので、

録音したものと調べたものとで藍染めのまとめをした。

 

2:藤井さんへの報告: 得られたヒン

職人の商品を売るのがうまくいっているのは、

職人の気持ちを汲み取る社長の器量にあるということ。

       

原料問題について何ができるか、ということでは、

紙組合や、役人などに問いかけても、意味はないという事。

というのは、そういうところは利益の

得られるものしかやっていかないから。

だからこそ小川社特有の農家や職人のネットワークを使い、

草木灰をつくってもらうなどの問いかけを、

少量ながらもすることはできる。

 


3:原さんから、那須楮の現状を聞く

20140807kouzo_nouka.jpg


▲現在2人しかいない那須楮の農家さん。雑貨店などを営みながら楮を生産している


那須楮生産を見てきた現実を教えてもらい、

驚愕した。全体の楮生産の6%しか和紙に使える白楮にならない。

過酷な夏の枝うちの作業もむなしく、

楮による年収は約たった11万。




そこから皮を剥ぎ取る職人への手間賃もとられるため、

到底生活のできるものではない。

そんなところで職人のプライドどころじゃない。

楮をちゃんと作れている農家は2軒のみ。

それも他の仕事をしながら生計を立ててやっと。

楮は頼まれているからついで程度だ。

わざと楮の栽培を終わらせるところもあるとのこと。

本当に、楮は岩野さんのところがつかっているぐらいだ。

20140806kouzo.jpg 

【いきなり生産が途絶えてしまうかもしれないものを売る意義】

こんな状況下で、私たちが奉書を売る意義というのはなんなのだろう?

近い将来、いつのまにかぱたりと作られなくなる運命に

あるのは目に見えているのに。

本当にこんなことしていて意味があるのか?

 

原さんは、小川社の一員として、

そして、私はインターンとして、無力ながら最大限できる事は、

こういった現状をもっと多くの人に知ってもらう事。


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思えば、蜜ロウワックスなどの小川社商品は

そういうことに貢献してきた

近年、温暖化の影響によりハチミツの出荷量が激減し、

更に世界的には新農薬によりミツバチがいなくなっている。



が、養蜂家さんが行う様々な仕事の中に、

蜜ロウワックスという副業を加えることで

養蜂経営が安定し、

その結果、ミツバチを守り

そのミツバチにより自然の循環が守られる。


kamishibai.jpg

写真:地元の小学校様は、小川社に社会見学にこられました。子ども達にはミツバチによる循環経済活動の様子を紙芝居でお伝えしました。



300年ずっと守られてきた日本最高の紙漉の手技でさえも、

時代に合わず和紙の需要が減った事で

原料調達が難しくなり、

気づかぬうちに終わってしまうかもしれない??

という、現代の、「見えない」時代を

「見える」時代に変えて行くささやかな取り組み。



だから、小川社をみると、

ミツバチがいなくなるとどうなるのか、

森林の木が管理されなくなるとどうなるのか、

そして和紙が使われなくなるとどうなるのか、が「見える」。




その悪循環を変えるささやかな取り組みにどう貢献できるか、

見て気づいてくれた人は動き出す。

そうしてネットワークを広げて行く。

そのためには、小川社の商品を使う事にどういう価値があるのかを

しっかり汲み取ってもらう必要がある。

自然素材の有する、生きた素材特有の質感、機能、

自然の流れによる移ろい。

それを生活に取り入れる事でどう豊かになるのか。

 

 

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現状を踏まえた上で岩野さんの奉書をどうアピールする?=====================


岩野さんの奉書が、手で漉いたもの、

自然のもののみを使ったもので

でどれだけすばらしいものか機能性の面でアピールし、

その上でその裏にはどんな苦労と

現状(楮とその生産者の現状・紙漉の現状)

隠れているのかを視覚化し、

それを使う事にどのような意義があるのか知ってもらう。

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写真:岩野家が約300年続いた製法でつくった奉書は繊維が長く、艶がある。抜群の保存性をもつことからパブロ・ピカソをはじめ浮世絵などの版画にも愛用されている。また美術館や博物館などに収めている宝物の保存としても岩野氏の奉書が使われている。



最高級奉書を使うだけでなく、

それにより少しでも、循環のつながりを取り戻す手助けになるということ。

その上で、岩野さんの職人の気持ちも忘れずに。



・・・・というのは、紙を使えるところなら、

大切にしたいものなら、どんなものでもいいから

とにかくいい紙を使ってほしい。ということ。



そこから、小川社の他の商品の裏側にも引きずり込み

最終的には現代の環境問題自体に目を向けてもらう。



そして、日本の場合、環境の循環のヒントは、

日本ならではの自然と付き合ってきて

かつ世界に注目を浴びるほど高い技術を持った

モノ作りの「伝統」であること




つまり、岩野さんでいうところの、

300年ずっと守られてきた技法による奉書づくり。

にあることに気づいてもらう。



押し売りじゃなくて、自然と興味を持ってもらえる流れを作って。

これだけのものに貢献しているという姿勢作りをすれば、

買ってくれる人は、そこから岩野さんの奉書を使う事の価値、

小川社の守っている事の大切さの、

新たな情報発信源になり、そこからまた網を広げて行く、

好循環の起源となる。

だから、どこに使ってもらってもいい。

美術館でも、個人でも。ただその価値さえ

しっかり伝わり大切に使ってもらえれば。

ささやかな網ではあっても、

そのささやかさが積み重なれば大きな網ができあがる。

原さんの言ったように、

結合の強い楮の繊維のように密に絡み合って行く。

 

 

4:これからの予定 (お盆)

理念も固まってきたし、

どう売って行くのか、その意義も固まってきたので、

休み中に、あちこちに散らばっているヒントを凝縮させて、

HPでどう表現するのか何度も削りながら直しながら完成に近づけたい。

それと並行して英文にも直して行く。

お盆後は、穴埋め作業。



・小川社のスタッフに、商品を売る上でどういう点に気をつけているか、

商品に見る最大の価値、などを聞く。


・奉書、楮を顕微鏡で観察し写真を撮り、

繊維がどのような機能を果たしているかをまとめる。


–2014年8月7日インターン生 EDJONA ISMAILI日報より—

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