2014.08.12

九代目岩野市兵衛の工房へいく—2014年8月6日インターン生 EDJONA ISMAILI日報より—

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–2014年8月6日インターン生 EDJONA ISMAILI日報より—


代表(小川耕太郎)と原さんと私 3人で岩野氏の工房へ行く。


【学んだ事・気づいた事】

これは岩野さんのインタビューの録音した内容を書き出し、
内容別にまとめたものなので、すごく読みにくいですが、
そのあとに見に行った紙の博物館からとってきた資料と
合わせてもういちどすっきりまとめようと思います。
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・今工房で行われている仕事は富嶽三十六景の木版画の増刷が頻繁

木版画に使われる奉書の紙:厚手の紙 厚32mm

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富嶽三十六景』(ふがくさんじゅうろっけい)は、葛飾北斎の作成した代表的な風景画浮世絵。写真は富岳三十六景の特集をしたもの。このシリーズは岩野市兵衛氏の奉書で木版画を摺っている。木版画を摺る場合は、苛性ソーダなどで楮を煮ると、奉書が伸縮しやすく、繊維が結合力が弱いため、刷りにくいため、強度と保存性の高い、岩野氏の奉書が使われている。

 

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ネリの作り方

北海道の海苔卯木のカワとトロロアオイの根っこの部分をミックスさせてネリをつくる。 冬の方がネリが強い。竹の簾から楮の繊維が水の底に沈まないように粘りで保つ。冬の方がネリが強い。竹の簾から楮の繊維が水の底に沈まないように粘りで保つ。

 

  ===和紙をつくっているのは私ではない。水が岩野の和紙をつくってくれている(九代目 岩野市兵衛の言葉)=自然の恩恵を感じる場面を抜粋======


■越前の女神のコトバ「この村里は谷間故田畠少なく生計を立てることは難しい。 幸い清らかな谷水に恵まれているから紙を漉けばよかろう(和紙博物館にて)



■楮と天気の関係
20140806kouzo.jpg常に関東の台風を気にしている。暑い年の方が楮はよくとれる。寒すぎると、減産になり、値段がはねあがる。楮の質は常にその年の環境を映す。傷がつくと使い物にならなくなる。2つのところから、高くついてもいいから一番の楮をもらう。皮を剥く職人さんに皮を剥いてもらった状態で。(1年分一気に買い込む:2、3月)。 大子町に ころ富士とミナミタキ 竹内商店・にソウマさん
カワを剥く職人さん・楮を管理する職人さんが減ってきたため楮の値段は常に上がる。 楮はめかきをして生えかけの枝をとりのぞき1年成長する迄面倒を見るが、雨の降ったときにそれをしてしまうと、そこから赤筋ができてしまう。

(先代の昔は越前でとれていたらしいが、今はもうとれないため、加賀楮 (60%の歩留まり)になり、それもなくなったため、茨城の方までいかないとない。)

■北海道の海苔卯木のカワとトロロアオイの根っこの部分をミックスさせてネリをつくる。 冬の方がネリが強い。竹の簾から楮の繊維が水の底に沈まないように粘りで保つ。

■ちりとり(楮からゴミや埃をとる作業) 
20140806chiri.jpg塵よりの作業日数は、その年の楮の育ち方・天気の影響もあるが、だいたい3人掛かりで11~12日間かかる。

■奉書を漉く際に使う水は、パイプを引っ張って山のぬくたい地下水(16度ほど)を引き出している。

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■越前の川の質: 中性の軟水。 見て分かる。 石にアカがつくぐらいがちょうどいい。そして蛍が育つ環境ぐらいがちょうどいい。 
マンガンや鉄分が少ないと、 専門調査員。
中国の影響で酸性雨が降ると水の質が悪くなると言う人が居た.
トロロアオイの粘りがなにか変。

■ 草木灰で楮を煮だした奉書はつくりたいと思いますか? 
平成2年 紙の組合に岩野さんは草木灰を使う技法を教えたが、今では手に入りにくい、大変な手間なためほとんど誰もやっていない。
ソバも、コンバインで粉々にされ、なかなか乾かないため使えない。し、ちりとりのときくずくずだとチリを増やすばかりなので作業ができない。小川社さんのように草木灰で漉いてほしい人は居るが、あと一回分しか残っていないため作っていない。注文があればつくりたい

■職人の自分の紙に対するプライド
安くする方法はいくらでもある。
「死んでくときは裸、そんにもうけんくてもいい」

質の悪い紙が今は出回っている。→時代によって用途が変わるのは仕方ない。しかしいい紙は変わらないでほしい

先代からの知恵が息づいた紙の質はかわるはずがない、変わっては行けない。
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[今回の見学で感じたこと]

職人たちがいなくなり、せっかく和紙の原料になる楮は管理されず放置され、道具に使う竹やぶも荒れ、刈った後のソバやよもぎは無駄ものとしてコンバインで処理され、和紙を作るための循環がなくなっている。なくなったから次にいこうかではなく、元々の環境を整えて一つの場所に頼らなくていいように、競争力をつけるように環境を整えて行く必要がある。

農林水産省か文化庁か和紙の保護団体に、原料を育てる管理を徹底するように言う?でも、やりたくない人をどうやってくださいというのだろうか。金銭的なものだけでなく、ライフスタイルが合わなければやってもらえない。

いかに質がいいか、という事で文化庁から認定。
毎年助成金の用途を報告書にする。 何に力を入れ、錬磨したか、どんなし指導をしたか。

道具作り(漉き道具保存会に助成)に力を入れてもらっている。原料の事はまだ手つかず。

紙漉が居ないと、道具作りの職人にも将来性がない。 いくらじたばたしてもどうにもならない。 紙漉職人がへっていくのをどうにかすれば、悪循環はとまるのだろうか?

–2014年8月6日インターン生 EDJONA ISMAILI日報より—

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