2021.09.17

一見、蕎麦屋。実は、農山村再生を実現する「山帰来プロジェクト」

一民間企業が取り組む地域活性化の新たなモデル

神社の境内を思わせる大谷石の石畳。その先にたたずむログハウスの建物は、
栃木県小来川産の杉をふんだんに使ったシンメトリーのお店が蕎麦屋「山帰来」です。

口コミで評判が拡がった自家栽培、自家製粉、手打ち蕎麦で有名なお蕎麦屋さん「山帰来」は、ただのお蕎麦屋さんではありません。実はこのお店、株式会社栃木都市計画センター株式会社NRS  が発信する、都市との懸け橋をつくり農村再生をする蕎麦屋なのです。

ここでは 地域の問題を修復し(耕作放棄地、 放置された森林資源 、野生鳥獣被害 、非効率な公共交通)、さらに地域の隠れた資源に光を当て、新たな風情や価値を創りだす取組をされている蕎麦屋なのです。

ログビルダーの神様アラン・マッキー氏が直接指導した ログビルディングスクールを開校し た町、小来川町。

▲地域材(栃木県小来川産の杉)をふんだんに使った外装は、炭化させた杉板と
ウッドロングエコ塗布済みの丸太を組み合わせ、独自のコントラストを生みました。

栃木県小来川町は、現代のエコロジカル・ログビルディングの神様B・アラン・マッキーが 直接指導した伝説のログビルディングスクールを開校した場所でもあります。公私ともにお付き合いいただいている 幾何楽堂 (kikagakudo.com) 様は、この小来川でアランマッキーにログビルダーとしての教えを受けたこともあり、幾何楽堂様がこの店を建てられることになりました。

「ログハウスづくりは、自然環境に対する敬意と感謝を表す行為である/アラン・マッキー」

を念頭に、つくられたこの建物は
・土に帰る自然素材(杉材、大谷石、漆喰など)の多用化
・余剰建築資材の有効活用と産業廃棄物の抑制(粉曳き棟の建設)
・解体古材の積極的活用 他 をモットーとしています。



可能な限り、周辺景観との一体化や環境負荷の軽減に配慮した建築は、山と川に抱かれた、東黒川と西黒川の合流地点に 地元(栃木県小来川)の樹齢約80年の杉材を焼く160本を新たに切り出し使いました。

ここでは、地場産の食材を使った飲食店と地域の情報発信を行い、先ずは多くの人に小来川に来てもらう。 この施設(小来川 山帰来)は人の動きを創り出す装置としての役割を担っています。

内装の木部は、地域材にウッドロングエコを塗布し、仕上げに蜜ロウワックスを塗布をした。

←エコジカル・ログビルディング/著アランマッキー
いま、私たちに必要なことは、地球にできるだけダメージを与えずにログハウスをつくることである」という B・アラン・マッキー氏 が、これまで培ってきたログハウスに対する考え方、土地探しからプランニング、実践的なログワークまでを完全網羅したハンドメイド・ログハウスのための技術と精神のバイブル。 雑誌「夢のログハウス」の出版社の地球丸から発刊されている書籍。

蕎麦屋の隣で、ワサビ栽培に取り組む理由。

「都会からこられたお客様に、きれいな水は田舎の人達がつくっていることに関心を持っていただき、この取組が 都市との架け橋となり、農山村再生を実現します!」と語る星野光広さん(写真右)。

写真左から 小川耕太郎 小坂親方(幾何楽堂) 星野 光広 さん

キレイな水がないと育たないワサビを見ていただくために、蕎麦屋の隣でワサビ栽培をされています。「食」を通して、都会から着ていただいた方に水源を守ることの大切さをお伝えしています。
きれいな水がないと旨い蕎麦はつくれないのです。
この「水源」こそ、私たちが守る財産なのです(談:星野さん)

2つの意味を織り成す言葉「山帰来」と関係人口の関係。

星野さんのお話の中で印象的だったのは「「山帰来」という言葉には、2つの意味が織り成すことに意味がある」という言葉でした。

「山に帰って来る」

 山々や自然環境にあふれたこの小来川地区を自分の故郷のような気持ちで、訪ねて来るのではなく、帰って来る場所。 

「山から帰って来る」

 山に帰るとは、本来の人間のありように落ち着くというような意味合いもあり、日常生活のなかで疲れた心身を癒し、 本来の自分のありようを取り戻して再び街に帰って行く場所。

最近、「関係人口」という言葉を耳にすることが多くなりました。その地域に移住する「定住人口」でもなく、観光に訪れる「交流人口」でもない、地域や地域の人々と多様に関わる人々のことを指す言葉を指します。

多くの人間の動向が絡み合い、物語が進行するような群像劇のように、「食」を通して取り組む、一民間企業の取り組みは、その町の課題だけでなく、その水源を利用している都会の方々にも、本来の人間のありように落ち着く場所がみえれりと関係人口が増えます。



「旨い蕎麦を食する」

そして

「山を整備し、綺麗な水をつくり、旨い蕎麦を食する。」 ことにつながる。


B・アラン・マッキーが伝えてきた「自然環境に対する敬意と感謝を表す行為」は建物だけではなく生きる原点だったことがわかりました。




※このblogは2011年に取材したものを再編集しました。現在、コロナウィルス感染症の緊急事態措置をうけ臨時休業をされています。

小川百合子(おがわ・ゆりこ)

小川耕太郎∞百合子社 取締役。1998年、山一證券が倒産した年に、夫婦で会社を起業。地域の生物資源と産業(技)と自然が循環できることをコンセプトとした持続可能な商品づくりをし第一弾が「未晒し蜜ロウワックス」。主な仕事は持続可能な商品の一般化のためのPRを担当(小さな会社なので何でも屋ですが、、、)

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