2021.07.29

半径5キロ以内の木で建てた ゲストハウス「滋雲庵」で、森の音楽会。

2014年6月20日(金)に慈雲庵(和歌山県那智勝浦町井鹿にあるゲストハウス)にて「森の音楽会」が開かれた。車を止め地図を片手に細い道を10分ほど歩くと森の中に「滋雲庵(ジウンアン)」というゲストハウスがあった。 
どこまでも森がつづき「道を間違えたのでは」と不安になった矢先に、なにやら既に縁側にたくさんの親子でにぎわっていて、ほっとした。近くにある保育園の園児達は、40分ほど歩き「森の音楽会」を聴きにきた。その散歩道は絵本そのものの世界だった。今日は、那智勝浦井鹿の町という過疎地に、総勢150人以上の人が集まった。
今日のプログラムでは、読み聞かせ×音楽というコラボもあり、会場は、絵本のような時空へワープしたような空気につつまれていた。
木の家とバンドネオンとギターの音が心地よく響き合う。ふわぁーっと通り抜ける森からそよぐ風が心地いい。リズムセッションの曲では 園児達もリズムにノリノリ。アコースティックな音々と子ども達のワクワク感を、微笑むようにつつみこんだそんな木の家でした
この森の音楽会は、清水工務店2代目の清水弘治さんの奥様 佳恵さんが発起人となりゲストハウスのオーナー尾鷲さんの協力を得て企画された。



「たくさんの人に素晴らしい音楽を聴いてほしいなと思うのですが、夜のライブって小さな子供がいるとなかなか行けなかったり、行っても子供が騒いでしまいそうで気が気じゃなかったりしますよね。私もそんな1人です。そこで、ライブツアーで勝浦を訪れる仁詩さん田中さんに、小さなお子さんのいるママのための音楽会をお願いしました♪



場所は、当社(清水工務店)で建てさせていただいた、井鹿の森の中の静かなゲストハウスです。お子さん向けに、絵本の読み聞かせや手遊びのコーナーもあります。ちょっとくらい子供が騒いでしまったってOKです。授乳するスペースもあります。みなさん、素敵な音楽で心を潤しましょう♪(清水佳恵)」


佳恵さんの大らかな人柄と、弘治さんの職人気質な実直な人柄が、ゲストハウスのオーナーさんと共奏した、そんな音楽会だった。
ゲストハウス「滋雲庵(ジウンアン)」の施主 尾鷲(オワシ)様は、10年前に東京から那智勝浦町井鹿に移住された


「この土地に移住すると決めたとき、10年後にゲストハウスを建てるぞ!と決意したんです。

決意をすればね、不思議とイロイロな縁をいただいてね・・・一つ一つ事を丁寧に進めていけば、10年経つと必ず夢が叶うんですよ。(尾鷲さん)」


確かに。決意と覚悟を決めると、まるでその道に進むかのように物事が動くことがある。
 尾鷲さんの愛犬と一緒に川沿いの道を歩きながら、家を建てるまでのお話を聴いた。
 「ここはね、一週間雨が降らないと川が乾いてしまうんですよね。今は乾いているけど・・・台風が通ると木々が倒れてね・・・。地主さんに許可をとって倒れた木々をユンボで動かし、道を整理しているうちに、木を譲っていただくことが多くなってね。井鹿の木を使った家を建てよう!と思ってね(談:尾鷲)」 
 
 「滋雲庵の大黒柱は400mm角で樹齢130年くらいの材なんだけど・・・この木も川沿いに生息していた木を切らせていただいたんですよ(談:尾鷲)」 
 「ほら、これが大黒柱の切株だよ。川沿いに生息していたからね、搬出するまでが大変でね、足場を組んでから伐採したんだ。川の流れにのせて搬出したんだ(談:尾鷲)」
写真は、尾鷲さんの自宅から徒歩5分くらいのところにあった切株だ。 
 この建物を設計した清水工務店の清水弘治さんは
「構造材の6割は地元 井鹿の木で建てましたからね(談:清水弘治)」

「そうだね・・・自分で木を搬出していたから、ユンボが通れる程度の距離に生息していた木で建てたかった(談:尾鷲)」

「でもこの道 2tトラックが入りませんよね。よくこんな大きな柱を運べましたね?(談:百合子)」

「道に鉄板を渡して、ギリギリ2tトラックで運びました(清水 弘治 )」

「尾鷲さんの夢を建築という制約が多い条件の中、見事にカタチにした清水工務店さんに拍手喝采ですね(談:百合子)」

「これだけストーリーのある家は、なかなか無いですからね。僕も職人さんも施主さんのこだわりに応えるように頑張らせていただきました(清水 弘治 )」 
 音楽会が終わってから、尾鷲様のご自宅で昼食をいただき、食後 滋雲庵の写真を撮りにいきました。井鹿の自然と溶け合う 壮大なゲストハウス「滋雲庵」。木ならではの反響音なのだろうか?森から吹く風と井鹿の川のせせらぎが空間に染み込むような響きが印象的でした。(2012年のblogを再編集 文:小川百合子)

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