2021.07.29

嬉しさを映し出す谷 CinemaValley、土地の力を惹きだす設計のしごと。

ゆるやかな坂道を下り
その先にこの森が
ひろがっている。
コナラ、クロモジをはじめ
多様な樹々がのびやかに生息する。
鳥取県大山(ダイセン)の
山麓の谷に位置する静かな森。 
施主のかずぅさんは
この森に訪れただけで
心穏やかになるような
空間をつくりたいと願った。 

その土地にピンときた

施主の直観を丁寧に読み解く

「鳥や虫や樹々。
森の生態に敬意や注意を
払いつつ建物を建てる、
というよりは
そっと木箱をおく
そんなイメージでした。
(談:しらいし設計室・遠藤さま) 」 




しらいし設計室の遠藤さんは、
元々、外構の仕事をされており
その土地にピンときた施主の直観を
丁寧に読み解き、
土地の魅力を惹き出す仕事をされる。


大山(ダイセン)にくれば、全てが調う。

西日本最大級のブナ林が
育んだ清らかな水は
周辺の生物と麓に住む人々を
潤すだけでなく
海にまで流れ込み
豊富な海産物をうみだす。
大山火山灰を含んだ土壌は
有機物を多く含んだ黒々した土だ。
そんな土で育んだ野菜を
薪でコトコト煮込んだ
森のスープ屋の店名は
「Cinema Valley(シネマバレイ)」。

嬉しさを映し出す谷という意味をもつ。 
住む人の想いや自然の力を
できるだけシンプルに
つつましくも


満たされた空間を生みだす。


しらいし設計室さんの仕事は
とても細やかで
目に見えにくい地形の
把握からはじまる。
 

約678坪の森の中の
下水排水に無理のない
道路の近くの場所に
約10坪(建坪)少々の
建物を建てる。


森の風情をいかす事と
限られた予算から
只々考えて手を下されました。

 
 車を停めたお客様は森の方からはいる。 

森の方からはいる駐車場→店までの回路。

あえて道路側には
玄関側をつけず
車を停めたお客様は
森の方からはいる。 
赤身の杉材にウッドロングエコを
塗布した木箱のような外観が
CinemaValleyだ。
 
高基礎で少し持ち上げられた
店内にはいると、、、 
道路沿いの窓は
腰壁より高い位置にある。
店内の椅子に腰をかけると
道路の存在が和らぎ
のびやかな樹木が目に入る。 
また、道路側からみると
建物の両側に開けられた窓を通して
森の緑が目に入る。 
オススメは窓側の席。
店からみえる樹々を
できるだけ残しつつ整備をされ
窓からみえる景色は
映画のワンシーンのようだ。 
驚くことに
店主のかずぅさんは
野菜の指定を一切しない。
「スープをつくりながら
思い浮かべるのは
生産者さんの顔です。
信頼する生産者さんにたのむからこそ
どんな野菜かはこだわりません。
信頼する人がつくった
野菜だからこそ
心を込めてスープづくりができます。(談:cinemavalley かずぅさま」 
季節の恵みをいただく
一期一会のスープ。
薪が燃える音と
お湯が沸く音が
やわらかく響く。 

大山環境宣言 と 一木一石運動

大山(ダイセン)は
1936年(昭和11年)に
国立公園に指定された。
その後1963年(昭和38年)に
蒜山地域、隠岐島、島根半島、
三瓶山地域が追加指定され
現在の「大山隠岐国立公園」となったそうだ。
 
 
2013年6月1日『大山環境宣言』が
採択される。
 
 
全国に先駆けて官民一体で、
頂上保護や美化活動に
取り組んできた山でもある。
 
 
その代表的な取組みが
「一木一石運動」。
 
 
1980年代当時、
オーバーユースにより
裸地状態だった頂上を、
大山を愛する人たちが行動を起こし、
現在のような頂上一面に
緑を蘇らせたという。
地域の自然と共に暮らしてきた
設計士さんだからこそ
施主のかずぅさん想いを
形に描けたのではないかと思った。(2018年blog再編集/文:小川百合子)
  


記事一覧を見る