2020.07.22
風土に学び、今を受け入れ、あらためて原料に学ぶ。–未晒し蜜ロウワックスの原料「荏ゴマ油」について–
たまーにではありますが、、、
「サラダ油でフローリングを磨いているから、蜜ロウワックスは高いしね」
といわれることがあります(汗)自分も年を重ねたせいか?最近は、家庭を守るためにいろいろやりくりされているのですから、こういう質問にキチンと答えられるようにならないといけないなぁと思うようになりました。
油にも適材適所がある。荏ゴマ油は縄文時代から使われていた。
実は「油」には
(1)乾性油 (2)中乾性油 (3)不乾性油 があり、
名のごとき「乾性油」は早く乾くという意味です。西洋美術では油絵具には乾性油「亜麻仁油」が混ぜられているのも説得力があります。日本では歴史的に「荏ゴマ油」が番傘や提灯や油紙、灯りにつかわれており、その歴史はお米より長く、なんと縄文時代に漆に色付けの定着のさいに(赤漆、黒漆)に荏ゴマ油がつかわれていたことがわかりました。
(参照資料:玉川大学「漆技術は縄文時代にはじまった」http://www.tamagawa.ac.jp/SISETU/kyouken/jomon/ )
未晒し蜜ロウワックスに荏ゴマ油をつかった理由
蜜ロウワックスを販売し21年経ちましたが、販売して5年くらいは「なんであんなに高い油をつかうの?」といわれることが度々あります、
▲デジカメがなかったころだったので、写ルンですで撮影した写真。右半分が蜜ロウワックス試作品をぬったケヤキ
主人は21年前、あのカサカサのケヤキ板に中村養蜂所さんが試作してくれた蜜ロウワックスを塗った時「これでいく」と即決したのは直観ではありましたが、利益率とかを考えずに「安全でいいものの作りたい」という直観に従ってよかった!と今でも思います。https://mitsurouwax.com/news/2014/11/——.html
▲小川耕太郎の祖父
また代表(小川耕太郎)の祖父が番傘や提灯に「荏ゴマ油」をつかっていたということも決断の一つになりました。
▲販売当初の未晒し蜜ロウワックス
日本一(or二)雨量の多い尾鷲で長年つかわれていたという時間という実績からみても「荏ゴマ油」という選択に迷いはなかったように思います。科学的なものの見方は時代によっても変わり、変化するものです。一方、風土を科学的な手法を用いて調べると意外にも「昔の人はよく知っていた」ことがわかります。
少量で良く伸びる!安全性と風土を重視。
昨年、那智勝浦で開催されたArcade2019というイベントでは、お客様から「蜜ロウワックスってすごーく伸びて、いまだにもっている。本当に少量でいいんだね。本当にいいよ」といわれ、とてもうれしかったです。私も自宅には蜜ロウワックスを使っていますが、本当に少量でよく、良い原料をつかえば、そんなに量もいらないと実感します。10年経った、無垢独自の自然な艶がでてきました。一方、商売の面からみれば、数年に一回のご購入なので、常に新規開拓をしないとならないという大変な面もあります。
ホームメンテナンスは「安全性」と「素材を痛めない」ことも大切
ホームメンテナンスは、「手入れをすることで住まいを維持していく」ことが目的です。フローリング材や家具を乾燥から守り、はっ水保護することが目的なので、掃除するたびに実は強力洗剤により瞬間にキレイにはなりますが、実は素材を痛めていたとなれば考えモノです。何より家族みな「安心」して使えるのが大切だと考えています。
汚れ落としをしながら塗膜保護は「蜜ロウミストデワックス」、艶出しやはっ水による保護は「蜜ロウワックス」というセットで手入れをすることで「無垢ならではの良さ」を味わっていただける名脇役になっているように思います。
色々な声を聞き、再考する。コロナ禍の中、どのように事業を存続するのか見直した。
話を元に戻すと、、、「サラダ油を使った方が安い!」という声を真意に受け止めなければ、家の掃除でここまで考えなかったと思いますが、でるだけ多くの人にわかっていただけるように「蜜ロウ」「荏ゴマ油」という素材を今改めて勉強し、わかりやすくお伝えしたいと思います。
このように思うようになったのも、コロナ禍の中、ありがたいことに蜜ロウワックスやミストデワックスの需要が高まり(一方で建築業界が建築をストップした時期もあり木材の需要が減少していますが(苦笑))、世界中の人々が今まで経験したことにないことを経験しています。
今、自分たちは何をすればいいのか?逆に何をすれば会社として生き残っていけるのか?
試行錯誤しながらではありますが、やはりこういう時代だからこそ小川社の基本に戻り
「今、暮らしの中の生活雑貨について、もう一度見直す時期にきているのではないか」と考えるようになりました。
自然素材はウィルスの生存時間が短い!?
その理由の一つに、Newsweek日本版で「プラスティックやステンレスなどの硬質な素材はウィルスの生存時間が長く、木などの自然素材は短い」といった論文が発表されました。考えてみれば、ヒトは自然素材の家の歴史の方が永く、新建材の歴史の方が短いのです。工業化された建材の利便性により、今では「木の家」の方が珍しくなりました。
「無垢の家は汚れが目立つからイヤだ!掃除が面倒」という主婦の声から汚れがつきにくいツルツルの床材の開発が進み、サッと拭けばキレイという床材が急成長しました。コロナ禍でもう一つ分かったことはこの「ツルツル=硬質」に仕上げることで汚れをつきにくくしているため、論文によると、このような建材または塗装はウィルスの生存時間を長くしている可能性もあるのかな??とも考えられます。あくまでも個人の憶測ではありますが、単純に考えればそういうことになるのではないかと思います。
また洋服でも綿、麻、絹は帯電性が低いため静電気をおこしにくく、合成繊維(ポリエステル、ナイロン、アクリル)は静電気を起こしやすい。同様に無垢+自然塗料は静電気をおこしにくいことがわかってきました。もちろん長所短所はあり、それらを理解した上で提案していくことが大切です。
コロナ禍の中で除菌意識が高まり「目に見えない「菌やウィルス」をお掃除する」考え方が増えています。お気持ちはわかりますが、今もう一度、エシカル的な考え方で
エいきょうを
シッかりと
カんがル
ことをわかりやすくお伝えすることが大切なのです。同時に小川社も「必要に応じた安全な除菌」をお客様にご提供できればと思い試行錯誤しています。個人的にはむやみや除菌はムムムと思っていますが、必要な除菌はあり、明治時代の家庭の記録をみると季節により防御していたことがわかります。
スーパーで油がたたき売りされる時代に「火をつかわずに生で食べる油「荏ゴマ油」をはじめた油メーカーの挑戦
昨日は、蜜ロウワックスと蜜ロウミストデワックスの原料「荏ゴマ」の製造メーカー「太田油脂」様が訪ねてくださり、数十年もかけコツコツと荏ゴマ油を浸透させてきたお話をうかがい、その姿勢に心打たれ、改めて塗料としての「油」を勉強しようと思いました。幸い、21年前蜜ロウワックスの生産をキッカケに太田油脂さまとのお付き合いがはじまり、このご縁をもっと活かそう!
(▲画像:ダルビッジュ有ツイート https://twitter.com/faridyu/status/84973969039556608)
(▲画像:試してガッテン http://www9.nhk.or.jp/gatten/articles/20181121/index.html)
今でこそ、テレビや健康雑誌でとりあげられ、ダルビッシュ投手も「プロテインと荏ゴマ油をブレンドして飲む」ことで更に認知が高まった、アジアのハーブ「荏ゴマ油」ですが、販売当初はスーパーでたたき売りされるサラダ油が主流だった時代に「業界の非常識を覆す」決断に敬意を払います。その決断があったからこそ「今」があり、モノづくりも「みんなが求めるもの」だけでなく「何が大切のか」が求められサスティナブルな生産がより大切な時代になってきていると思います。
▲新商品になるかもしれない?試作品テストの日々
大企業でさえもリストラが増え、厳しい社会情勢ではありますが、これから10年を目指し、心にねじり鉢巻き(ネジリハチマキ)をしめ、これから10年にむけての「伝え方」及び、新商品になるか?ならないか?わかりませんが氣合いをいれ精進したいと思います。(小川百合子)