2019.07.08
2019年7月7日 南海日々『木育の取り組み紹介–山本さんと森田さん 天満荘で三重大セミナー—』
尾鷲市天満浦の天満荘で1日夜、三重大学セミナー「よるしゃべ」があった。同大東紀州サテライトの山本康介さん(34)と紀北地区で自然生活体感塾を開く森田渉さん(43)が「”森の国”子ども達につたえたいこと」と題して話し、県市長議員や教員、市民、同大学生ら28人が耳を傾けた。
同セミナーは「夜にゆるく、リラックスしてしゃべろう」がコンセプト。4回目のこの日は東紀州で木育プロジェクトを実施する2人が話題を提供した。
山本さんは熊野市で取り組んでいるプロジェクトを紹介。「東紀州は2016年県森林・林業統計によると森林率86%で、全国平均の60%を大きく上回る。尾鷲ヒノキをはじめとする良質な木があり、林業技術や木材産業が高い水準で発展してきている」とし、「子ども達にイベントを通して地域の産業を理解し、森林の機能をまなんでもらおうと3年前から熊野の若手林業家団体とともに木育プロジェクトを開始した」と明かした。
プロジェクトでは地球環境と森林機能を学ぶワークショップ、間伐体験を実施。原木市場や製材所を見学するだけでは子ども達に深く理解してもらえないと、事前に効果な木材をあてる「目利きゲーム」や、どの丸太を購入して同加工すれば儲かるかを考える「製材経営者体験ゲーム」に取組んだ。ゲーム後に見学すると、子ども達の意識が変わり、興味をもって現場に見入ったという。
山本さんは「木育をうけた子ども達は地域の状況や強み、林業に関する専門知識を得る。将来、地域外に出た際には、地域の強みをより深く理解し、地元木材の良き消費者となる。Uターンすれば、外部の視点をもって木材産業の担い手となり、持続可能な地域産業に発展する可能性も秘めている。今後もモクイクを地域教育として、熊野市全域に木育を地域教育として、熊野市全域に拡大したい」と力を込めた。
森田さんは尾鷲市の宮之上小学校3年生が取り組む「僕らの遊び場づくり—山育・木育・おわせ行く—」について話した。
同企画は6月に始まり、全5回の日程で子ども達自身が八鬼山市有林を整備して自然豊かな環境を生かしたあそび場を創出し、自己肯定感や危機管理能力を育てる。
森田さんは「これまで多くの木育は、教える側の自己満足や押しつけになることが多かった」と指摘し、「誰にとって大切なのかを考えることが大事」と力を込めた。
今後は市有林を整備し、ハンモックやスクラックインを設置。サバイバルゲームやアスレチックアーチェリー、読み聞かせなどに取組み、五感で自然を体験する。
森田さんは「子どもがつくる遊び場だからこそ意義がある。大人がつくったあそび場なんて面白いはずはない」とし、「木育は将来、尾鷲のために何ができるかを考える子どもに育つと信じている。これからも大人が手を出さず、遊びから発生するものを大切に続けていきたい」
来場者から「大人が子どもにして良いことと悪いことの境界線は」「熊野市のプロジェクトに継続して参加している子どもはいるのか」「都会の子ども達を受け入れる予定は」などと質問が上がった。
2人は「命にかかわるような怪我が起こるときは指導もするが、擦り傷やけんかぐらいは、大人が助けると意味がない」「熊野市は学童を対象に開いており、ずっと続けている児童もいる」「まずが地元の子ども達を育て、その子ども達が都会の子供に指導するのが理想」と答えた。