2019.05.14

小川耕太郎が考える、伝統技術の継承

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小川耕太郎∞百合子社では、21世紀型山林循環経済活動の構想と実践を目指し、その考えに基づいた商品を開発、販売しております。2009年より、越前生漉奉書長勝鋸木製ブラインド「こかげ」、自然乾燥の梁桁材などの商品を新たご紹介することになりました。 なぜ、弊社がそのような品を取り扱おうとしているのかについてふれたいと思います。



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2009年の春、親戚から

「ある家主が家をもらってくれる人を探しとるんやけど、どぉ?なんせ解体すると、かなりのお金がかかるそうやぁ。」

会社をはじめ11年目にとてもありがたいお話を頂きました。しかし、物資が乏しい時代に建てられ、その上長い間空家で放置されており、傷みが激しい民家でした。
小川社は起業後10年目に[木もちeー外壁]という新商品をはじめて、この商品が今後の小川社の決め手になるのでは!と感じていました。 ・・・・・・「よし!この家を小川社の実験台の家にしよう」と決意。改修工事にむけて以下の2点を留意した。


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改修工事は、地域の大工、左官屋、建具屋、畳屋、経師屋、電気屋など様々な技術屋さんが集まりました。
そのとき襖紙をどうしようか?と考え、知人のインテリアコーディネーターに相談したところ、手元に見本の和紙があるから使いなさいよとプレゼントして頂ました。 その方は、現代空間に和紙を使う試みをしていたものの、活動を一次休止してしまったと話されていました。私は、数年前からずっと気になっていた。

「藍染の奉書はどうなった?」

と尋ねたところ、

「岩野さんの奉書は素晴らしいけど、かなりの手間がかかる紙なので、どうしても高くなってしまうでしょ・・・・・そこまでの和紙は使えないという方が多くて・・・・」

との返答でした。

「えー桂離宮の襖紙までつくられた方が・・・・・。ならば私が売る!!

と決意したのです。早速、福井県越前へいき、九代目岩野市兵衛氏にお会いし、私の考えと目指すことをお伝えし、ありがたいことに弊社で販売させていただくことになりました。



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 ▲紙祖の神様を祀る 大瀧神社、岡太神社内にて岩野市兵衛氏と小川耕太郎


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▲紙祖の神:大瀧神社、岡太神社「紙と神の祭り」の時の画像。毎年5月3日–5日の期間、 「紙と神の祭り」が行われます。

継体天皇(日本の第26代の天皇)が皇子として当地に潜んでいた頃、岡太川の上流、水清き宮ケ谷に女神が出現。「この村里は谷間故に田畑少なく生計を立てることは難しい。 幸い清らかな谷水に恵まれているから紙を漉けばよかろう」といい、自ら紙の漉き方を教えられたという言い伝えがあります。



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不思議なことに、この後に岩野さんの奉書が鋸業界の革命児 鋸研ぎ(目立て)職人の長勝(長津勝一)さんとの出会いにも繋がっていったのでした。

長年培ってきた技術は、一度無くなってしまったらもう取り返しが付きません。私は「技術」は自然や命、人間の誇りと同じだと考えています。
私は出来るだけ職人さんの手仕事を残したいと思い、チャレンジすることにしました。職人さんの精神がすみずみまでいきわたった仕事。 表には見えない細部まで手の入った仕事は、「こんなもんで」といった力の出し惜しみがありません。
私はこのような仕事に触れたとき、何故か気持ちが高揚します。何故だろうか?いい物をつくっている人は、働き方からして違います。 生き様や仕事を通して培った哲学は、私達に何か大切なものを教えてくれます。


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▲岩野市兵衛氏の工房にて小川耕太郎∞百合子社のオリジナル奉書「藍の漉返し」をつくっていただきました。


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nagakatsu-2.jpg▲鋸研ぎの革命児 長津勝一氏 ヨーロッパで開催されたワークショップ



もちろん、全てをそのようなモノで囲むことは不可能だと思います。しかし、「今の時代はね・・・」ではなく、良いものを売るためにはどのように伝え、どのように販売していくか常に考え、行動に起こさないと、
凄い技をもった技術まで廃れていってしまいます。



そして、そのような技術を後世へと繋げていくためには、時代時代に応じた改良を重ねていくことも必要だと思いました。これらの商品はゆっくりではありますが、職人さんのご協力とご理解をえて、現代にあわせた商品が生まれました。



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▲長勝鋸を取り扱ってから1年後にできた商品。剪定用腰鋸は長勝鋸×京都の庭師とのコラボ開発。長勝鋸では珍しく小量産体制でつくったチップソー復刻版




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▲桂離宮の茶室「松琴亭」の襖紙につかわれている奉書は八代目岩野市兵衛氏が漉いたもの。九代目は先代と一緒に「藍の漉返し」の技を学ばれました。この技術を十代目にも継承していただければと願い、小川耕太郎∞百合子社のオリジナル商品として「藍の漉返しの奉書」を商品化しました。

現代の住宅にあうように「濃藍」「藍」の2種の色身をご用意しております。

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▲某菓子メーカーの茶室。桂離宮の茶室と同じ製法の奉書をお求めになられ、ご注文をいただきました。




小川耕太郎∞百合子社では、長年培われた技術を後世にお伝えしていくために、さまざまな切り口で表現していきます。 新たな売り方とマーケットをつくる勢いで取り組んでおります。どうぞ、宜しくお願いします。(小川耕太郎)



※この文章は2009年に小川耕太郎が書いた文章を編集し再稿したものです。

 

 

 

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