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週刊わっ!

2020/06/29

住む人の物語がしみこむ、希少な国産栃のフローリング材

「原節子さんのような材なんです。」




栃のフローリング材をこう紹介してくれたのは、小川耕太郎∞百合子社の百合子さんでした。あんな美しい女優さんに例えらる木材ってどんなものだろう?図らずも目にする前から期待とハードルが上がってしまった栃ですが、その存在感と価値は想像を上回るものでした。



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「国産栃のフローリング」




透明感と光沢感のある、静謐な白さ。落ち着いた品性と、こう言って良ければ、知性(木の知性、というのもなんだかおかしいですが)すら感じるような佇まい。素人目にも、その素晴らしさは明らかです。



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これは、高樹齢だからこそ現れる「杢(もく)模様」。年輪である「木目」とも違う、複雑な模様です。この杢模様がところどころに浮かび、光の当たり方で様々な表情を楽しませてくれます。



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中でも細かく波打ったような杢模様は「縮杢(ちぢみもく)」と呼ばれ、ひときわ輝きを放ちます。



実物を見ると、平面のはずなのに奥行きがあるかのような立体感が。螺鈿細工(らでんさいく)のような重層的な美しさに思わず息を呑むほどです。



それでいてぎらぎらとした強い主張はなく、和室や洋室、モダンにもマッチします。



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  ▲栃の木



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▲山から切り出した栃の原木


そもそも栃といえば、一枚板でテーブルになっていたり、石臼だったり、あと栃の実は縄文人も食べていたよな...。そんなぼんやりとしたイメージしかないものの、フローリングや壁材にするというのはあまり聞いたことがない。




それもそのはず、一般的に栃の木を製材する際には、テーブルなど大きなものを切り取った後に板材を取るため、フローリングに使うことができるのはほんのわずかな材なのです。



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▲丸太から栃のテーブル板などを製材した後に、板材をとります。

秋田の製材所でこの栃に出会った小川社代表の耕太郎さんは、「俺を待っていてくれた」と直感。すぐに買い取り、加工を依頼したそうです。




一本の栃からわずかしか取れない板材は、何年も何十年もかけて集められたもの。何年もかけて集めるということは、その期間ずっと倉庫に保管しておかなければならないし、やっと集まった材は色が変わったり埃をかぶったりしている。いざ使うという時にはもう一度洗って干して表面を削り、綺麗にする...。




費用に見合わない、非効率な「手間」をかけることは敬遠され、管理も販売も面倒な栃の板材の扱い手はほとんどいなくなったといいます。



国内でも現在扱っているのは小川社の他にほとんどないと思われるほど、希少な材なのです。




この「手間をかける」というのは小川社の仕事に通底する理念の一つのようなもの。



効率を求めるのではなく、あえて、面倒でも手間をかける。手間をかけなければ生まれないものを埋もれさせないために、手間をかける。その姿勢が商品に漂う静かな深みとなって現れているのだと思います。



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天然木の材を取り入れるというのは、経年変化を楽しむことだと教えてもらいました。モノと一緒に歳をとるということ。



日光にある「山小屋カフェ 清流園」さんの床には、樹齢が何百年にもなる幅広の栃の板が張られています。施工から何十年も経ち、もともとは色白だった材が綺麗な飴色へと変化しています。



木材は少しずつ手を入れて、壊れたところがあれば修理して、永く付き合っていく。そうすると次第に色艶を増し、ともに時を過ごしたことで気持ちにも馴染んでくる。



古くなったら捨てれば良い、汚くなったら新しいものを買えば良い。




そうではない選択が少しずつ見直されてきている今、生活に木を取り入れ、手入れをしながら永く付き合っていこうという意識は徐々に高まっているように思います。




昨年(2019年)は美術評論家ジョン・ラスキンの生誕200年の節目の年。それを受けて彼の思想が改めて紹介されたことが、その意識の高まりをさらに後押ししているようです。




19世紀に活躍したジョン・ラスキン(イギリス)は「自然をありのままに再現すべき」という思想で知られ、長年にわたり文化財保護運動やナショナル・トラストの創設にかかわりました。あの夏目漱石にも影響を与えたと言われています。



彼は『建築の七燈』の中で、「建物のもっとも偉大な栄光は、
(...) 『歳月(age)」にあるのである。雄弁に語りかけ、断固として見守り、神秘的に共鳴するあの深い感覚の中に。」と評論し、直線的な進歩である「イギリス産業革命」の時代に、意図的に半進歩的な価値観を論じました。


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ラスキンの思想に呼応するように、永く付き合うに相応しい希少な栃のフローリングは、特別な場所の、大切な時間のために。


高樹齢の栃が描き出す杢は、時を重ねるほどに深い輝きを増します。あの原節子さんのような「静謐な白さ」はどのように変化していくのか。住む人の物語をしみこませながら、共に歳月を愉しみたいフローリングです。







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文:本澤結香

尾鷲市九鬼町にある書店「トンガ坂文庫」店主。長野県松本市出身。大学進学を機に上京の後、2017年に尾鷲市に移住。2018年に古本と新刊本を扱うトンガ坂文庫をオープンさせた。

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(参考資料)
・時間の中の建築(ON WEATHERING -The Life of Building in Time / 著:モーセン・ムスタファヴィ ディヴィッド・レザボロー 黒石いずみ訳/鹿島出版)

・時がつくる建築 --リノベーションの西洋建築史 / 著:加藤耕一 / 出版:三陽社)


・アネモメトリ--風の手帖 https://magazine.air-u.kyoto-art.ac.jp/info/699/







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