検査結果に基ずく定量評価
検査機関 : お茶の水女子大学生活科学部田中辰明教授研究室
前提条件 : 部屋の面積
6畳、天井高2.4m、換気回数0.5回 
分析結果 表2
化学物質名 放散速度
μg/kg・hr
基準値ppm 所見
ホルムアルデヒド ND(検出無し) 0.30 *1
0.08 *2
検出無し
アセトアルデヒド 11.0 25  *1 微量。製造中に意図的な添加ではない
アセトン 8.29 500  *1 極微量。空気中からの混入
*1 American Conference of Governmental Industrial Hygienists(ACGIH)が
   決めた空気中の許容濃度
*2 厚生労働省策定した室内濃度の指針値

1.はじめに
  分析では試験対からの(化学成分の)放射速度という形で計測結果が求まる。
  これに対し、各種化学物質の許容濃度提案値は濃度で示されている。室内の
  濃度は部屋の大きさ、どの程度建材が使用されたか、換気回数がどうであった
  かなどによって変化する。

2.サンプリング・分析手順
  
1.ワックスの分析用試料準備
    ワックスを一定量取り、アルミホイルに薄く塗り、マイクロ秤μで重量を
    測定した。
    ワックスの量は0.4936gであった。
  
2.放散とサンプリング
    上記の試科を500mlガラス瓶にDNPHパッシブ型サンプラー(SUPELCO製)と
    共に装入し、アルゴンガスを注入して満たした後、ガラス瓶を密閉し、
    3日間室温で放散させた。
  
3.分析操作
    サンプラーをガラス瓶から取り出し、アセトニトリル抽出で5mlとし、
    抽出液をHPLCで分析した。

3.分析結果補足
  サンプリングした試料を分析した際、ブランクテストも同時に行ったが、
  明らかなピークは現れなかった。


揮発性化学物質測定機。化学物質を測定する熟練した技術者。
文:田中辰明(NP0法人エコリビング推進認証協議会会報創刊号から一部抜粋)
超臨界流体反応装置

田中研究室では各種建材の化学物質を測定できるようにガスクロマトグラフ、高速液体クロマトグラフ、超臨界流体反応装置などを揃えている。
これらの微量な化学物質を測定することはそう易しい事ではなく、熟練した技術を必要とする。
この研究室には平成14年3月に建材由来の化学物質による室内汚染問題に関し多くの実験を行い、学位論文を書いた鄭境岩さんという中国出身のポストドクターの研究員がいる。
研究室としても多く持ち込まれるであろう建材の試験を重ね、さらに経験を増し、データーベースを拡充できることは願ってもないことある。
参考に鄭境岩さんの学位論文を紹介する。
論文は、住宅の使用建材などから発生する様々な化学物質の問題に焦点をあて、その健康への影響、測定法などについて検討したもので7章よりなる。
ガスクロマトグラフ



第1章

室内化学物質汚染の現状についてまとめ、本研究の目的と意義を明確にした。
第2章 室内空気汚染化学物質の発生源、健康影響についてまとめた。
第3章 揮発性有機化学物質(VOCs)の測定法について、容器採取法、固定吸着ー溶媒抽出分析法、固体吸着-加熱脱着分析法など従来の測定方法について説明、紹介した。
第4章 新築住宅6棟についてVOCsの実測を行い実験条件の検討を行い、住宅別の濃度の比較と濃度の変化を調査した。
第5章 固体吸着-加熱脱着法による揮発性有機化合物の分析を行い、その結果、容器採取(Canister)分析法と相似な分析結果を得られたのはTenaxTA吸着剤による固体吸着-加熱脱着法を用いた分析法であることが判明した。この事から、固体材料のサンプリングおよび分析にTenaxTA吸着剤が適していると判断した。
第6章 標準品を用い、サンプリング装置を装備した加熱抽出-固体吸着-加熱脱着-ガスクロマトグラフ質量分析システムの基礎条件を検討した上、実建材の測定を行った。ここで筆者は広沸騰点範囲の化学物質を一括的に分析が可能な方法を確立し実験室で少ないサンプル量でも建材中の化合物を確実に検出するのを可能にした。この分析法の再現性が良く、精度も高いことを証明した。 
第7章 総括を行った。

以上の内容は「居住環境の化学物質汚染、建築材料中の有機化合物測定など様々な問題の解決に寄与する可能性を含み、博士論文として優れた内容を持った論文として評価できる。」と審査委員会は判定した。このような測定は経験を積むに従い敏速に行えるようになろう。認証制度を支える研究組織として暖かく見守って頂きたい。

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